さらに、真野の同僚受付嬢たち(小野ゆり子・久松郁実)の、もはや宗教と言えるレベルの「エリートと結婚するための勝ち組マニュアル」が胸糞悪い。

「男に寄せて上げて、浮気されても不平があってもすべてを飲み込み、墓場まで猫をかぶってニャンニャンニャン」。

 若い女性たちが本気でそう考えているとしたら末恐ろしい。今の若い娘はそこまで間抜けじゃない、ちゃんと自分の人権意識をもっている、と思いたいよ、おばちゃんは。

 真野が本音をぶちまけて、男社会への呪詛(じゅそ)と怒りを吐き出すシーンを見て、スッキリするかと思ったんだけど、そうでもなかったな。それよりもローンの負担が大きすぎて。結局、なんだかんだいって、いろいろと背負わされるのは女だよな、とうなだれるのだ。

「浮気相手が15歳」はそりゃあ大問題

 もうひとつ『恋のツキ』(テレビ東京系・毎週木曜25時)は、なかなかの問題作だ。

 31歳のフリーター女性が男子高校生に恋をしてしまう物語。主演は徳永えり。映画館でバイトをしている徳永は、サラリーマンの彼氏(渡辺大知)と同棲3年。大きな不満はないが、結婚や出産などの具体的な方向には進まず、なあなあに暮らしている。ときめきは一切ない。枯渇した日々。

 ある日、徳永は偶然、同じスニーカーを履いていた、顔がめちゃタイプの男子高校生(神尾楓珠)と知り合う。胸がときめき、思いを抑えきれずに肉体関係に誘ってしまう。神尾もすっかり徳永に惚れこみ、ふたりは密会を重ねるも、渡辺にバレてしまった。

 徳永の心の逡巡(しゅんじゅん)は、31歳という年齢の女性を実にこまやかに体現している。

 高校生に恋をした自分への戒め、罪悪感、それでも抑えきれない性衝動、いずれ捨てられるという不安、若さゆえの一途さに対する恐怖、忘れていた「恋の喜び」……。いや、しかし、15歳はアラート鳴らさざるをえない。男女逆パターンを考えると、すごく気持ち悪いので。

 でも面白いもので、「恋は盲目」というけれど、逆なんだよね、女は。徳永は神尾と密会するようになってから、同棲する渡辺に対する小さな不満がどんどん積み上がっていく。