事故発生後の対応についても、報告書は、《すみやかに救急搬送の依頼をし、頸椎の損傷と判断して救急隊の到着まで生徒を動かさないようにした》とあるだけ。南部准教授は言う。

「首を動かすと状態が悪化することがありますが、応急措置の詳細は書いていません。第三者である救急隊の記録と照合した内容を載せていないのは隠しているとみられても仕方がない」

学校事故を軽視しているのではないか

 報告書の内容について疑問視する市議もいる。「こども青少年・教育委員会」に属する井上さくら議員は「事の重大さを鑑(かんが)みれば、表面的で、原因究明をしていないのと同じ。指導のあり方にも踏み込んでいません」と指摘し、こう続けた。

「市は指針を承知していません。学校事故を軽視しているのではないでしょうか。学校は当事者。そうした調査では、隠蔽や責任逃れを生じさせやすいのです」

 翔くんはいまも県内の病院に入院中だ。胸から下に麻痺(まひ)が残り、腕の自由もきかず、指は動かない。トイレは全介助だ。希望は、通っている中学に復帰すること。「早く友達に会いたい」と話しているという。

学校に復帰したとき、周囲の反応を受け止められるかどうか……」(篤志さん)

 学校から謝罪がなく、横浜市長が「考えづらい。学校の管理下で起きた重大事故と認識し、寄り添った対応を」と苦言を呈したあとも、事故へのお詫びの言葉は伝えられていない。

 両親は現在、退院後の生活を考えて、自宅をバリアフリーにする改装中だ。今後の生活を考えた場合、多大な費用が発生するのは必須。裁判も検討している。

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 いじめや事故は地域を問わず、どこの学校でも、誰にでも起こりうる。いざというとき、隠し立てすることのないよう教育現場の体質改善が求められている。


取材・文/渋井哲也
ジャーナリスト。教育問題をはじめ自殺、いじめなど若者の生きづらさを中心に執筆。東日本大震災の被災地でも取材を重ねている。近著に『命を救えなかった』(第三書館)