効果を実感した広瀬さんは、すぐ行動に移す。

 治療をしつつ運動療法を学び、日米両国でフィットネスのインストラクター資格を取得。帰国後、無料のフィットネス講座をブログで募集するところからスタートし、徐々に参加者を増やしていった。そして'13年、『キャンサーフィットネス』を立ち上げた。

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「がんの治療中は、早く社会復帰することがゴールでした。でも、無事に復帰できた今わかるのは、人生はその後も続いていくということ。その後の人生の質を向上させるためには、治療後の心身両面でのセルフケアが大切なのだと痛感させられました」

 日本ではがん患者と運動とは結びつきにくい。“病気になったらおとなしく養生が大事。運動なんて論外”と考える傾向が強い。運動が回復に与える影響も、日本では研究が少ないが、動かないことによる筋力の衰えは身体をさらに動かしにくくする。

 また、運動をすると気持ちが明るくなり、結果として人生の質も向上するという。

「がんになって、治療による体調不良や痛みで精神的に落ち込み、すべてが嫌になる気持ちはわかります。でも、そんなときこそ身体を動かしてほしいのです。外に出て、空を見上げるだけでもいい。そこから、次は歩いてみる、深呼吸してみる、と少しずつ始めて

 がんになっても、がんが治っても人生は続く。サバイバーが笑顔で豊かに生きていける、そんな社会づくりに貢献したいと広瀬さんは言う。

がんになったことで、“今日が最後の日かもしれない”と毎日を一生懸命、丁寧に生きる。そんな自分になることができた。がんにならなければ出会えなかった多くの人々、素晴らしい仲間ができたことが何よりもうれしいです」


広瀬真奈美さん ◎キャンサーフィットネス代表理事 表情研究家として雑誌、テレビで活躍。'08年に乳がんを発症ステージ3。その後、一般社団法人「キャンサーフィットネス」を立ち上げ、がん患者のための各種運動教室、健康管理セミナーを開催。