誰もが持っている「上原的ヤベぇ部分」

 人間に与えられた最大の能力は、忘れることです。人は忘れる能力を持つために仕事でミスをしたりするわけですが、忘れる能力があるからこそ、仕事の失敗や失恋の痛みをのりこえて生きていけるのです。往々にして、傷つけられた側は忘れることができないのに、傷つけた側はけろっとしているということはよくあることです。

 具体例で考えてみましょう。自分をフッた人、暴言を吐かれて疎遠になった同性の友達、パワハラめいた指示をしてくる先輩がいたら、何年経ってもそう簡単に忘れることはできないでしょう。しかし、自分が傷つけた「誰か」について、思い出すことはめったにないのではないでしょうか。私たちの誰もが「加害者は忘れてしまう」という上原的ヤベぇ部分を持っているのです。

 加害者は忘れるものだから、上原のしたことが許されると言いたいのではありません。命を絶つ復讐というのは、加害者に有利で、被害者のほうが損ではないかと思うのです。

 それでは、相手に敗北感を味わせる復讐とは何かといえば、被害者が生きて自分の幸せな姿を相手(加害者)に知らしめることではないでしょうか。そのためには、復讐する側、される側の双方が健康に生きていなければなりません。復讐こそ、正々堂々と公平な条件で成し遂げなくてはいけないのです。

 生きているということは、挽回のチャンスを持つということです。生きているかぎり、やり直しはききますし、嫌なことを忘れることもできます。人生の中で誰でも一度くらい乗り越えられないほどの経験をすることはあると思いますが、それでも、やはり生き抜いてほしいと思うのでした。


<プロフィール>
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ。会社員を経てフリーライターに。『サイゾーウーマン』『週刊SPA!』『GINGER』『steady.』などにタレント論、女子アナ批評を寄稿。また、自身のブログ、ツイッターで婚活に悩む男女の相談に答えている。2015年に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)を発表し、異例の女性向け婚活本として話題に。他に、男性向け恋愛本『確実にモテる世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。好きな言葉は「勝てば官軍、負ければ賊軍」。