78歳で料理研究家になった小林まさるさん。まさるさんは日々の「料理」が老化防止や健康につながっていると語ります。

定年後に主夫から料理アシスタントをへて料理研究家へ

 仕事一筋だった男性ほど、定年後、何をやっていいかわからないという人もいるみたいだね。そんな人にこそ、料理をおすすめしたいなあ。

 おれの転機はまさに定年後、息子夫婦との同居だね。嫁の小林まさみが料理研究家として仕事を始めたものだから、70歳を過ぎてから調理アシスタントを務めるようになったんだ。

 お酒が好きで料理は昔からやっていたし、病弱だった妻の代わりに食事も作ってたから、抵抗はなかったね。ただ、作る人の邪魔にならず、手順の先を読んで道具を揃えたり、下ごしらえのタイミングを計ったりしなくちゃいけない。頭と体をフルに使う仕事だから、やりがいもあると感じたね。

 そのうち、おれの料理を載せたいって出版社から話がきて、たまげたよ。おれも料理研究家になっちゃった(笑)。

 おれの場合、レシピを思いついたらすぐノートにメモしてるんだ。料理をしていると、頭も身体も鍛えられると思うよ。食材を買いに行くときは、歩くから足が鍛えられるし、荷物を持つから筋トレにもなる。たまに買う物を忘れちゃうこともあるけど、物忘れ防止には「復唱」するといいよ。

 仕事をやっていたときとは別の達成感、満足感が味わえるよね。料理は自分もまわりも幸せにできて、ボケ防止にもなるし、定年後に男性が始めるにはおすすめだよ。奥さんの手伝いもできて、重宝されるんじゃないかな。

いつものメニューをひと工夫
「おいしい!」を実感すれば料理の道は拓ける

 最初はとくに、立派な道具や高価な素材はいらない。手始めは、卵かけご飯や納豆ご飯でもいいんだよ。

 たとえば卵に醤油は当たり前でも、わさびを加えたらどうか、山椒の実もうまそうだし、納豆だったら長ネギを刻んで入れてみる、次はキムチ、塩辛も入れたらどうか……など“味の実験”を試したらいい。そこで意外なうまさに出逢えばしめたもの、“年だから”こそ前向きにやってみないとね。失敗したって料理ならたかが知れてるよ。もっと楽しまなきゃ。

 大事なのは「これがなければできない」と決めつけないこと、そして、後片づけまできっちりこなしてこそ、料理(仕事)だということだ。後片づけまでできれば、妻から煙たがられることもないし、感謝されるよ。

 まわりの家族にお願いしたいのは、作ってもらったときは、たとえ味に満足しなくても、おいしくないとは言わないでほしい。いいところを見つけておだてる。子育てと同じです(笑)。

 料理に目覚めれば、自分が食べるものにも気をつけるし、体の変化にも敏感になると思うんだ。おれにとっては健康のためにも料理は欠かせないよ。

<プロフィール>
料理研究家・小林まさるさん
こばやし・まさる◎昭和8年、樺太生まれ。定年後、嫁の小林まさみさんの調理アシスタントとなり、明るいキャラクターと確かな腕で人気者に。

出典:「NHKガッテン!健康プレミアム」(主婦と生活社)
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