「あの恐怖支配がまた始まってしまうのか……」(体操クラブ関係者)

 そんな落胆の声が続々と上がっている。12月10日、日本体操協会は、塚原光男副会長・千恵子女子強化本部長の宮川紗江選手に対するパワハラ行為の処分を発表した。

「第三者委員会の調査結果は“配慮に欠け不適切な点も多々あったとはいえ、悪性度の高い否定的な評価に値する行為であるとまでは客観的に評価できない”というもの。

 要は“パワハラとは認定されない”という結論でした。宮川選手と速見佑斗コーチへの引き抜き行為も認められませんでした」(スポーツ紙記者)

 体操協会は、これを受けて塚原夫妻に科していた一時職務停止を解除した。

「こんな大騒動を起こした張本人たちなのに、いっさいおとがめなしで復職。この結果に、関係者は“あの事件を彷彿とさせる、またなのか……”と、みんながボヤいています」(体操クラブ関係者)

 あの事件とは、'91年の全日本選手権で起きた大量ボイコット事件のこと。

「これは塚原夫妻の露骨な引き抜き工作に対する抗議で、女子選手を含む55人が出場を拒否したんです」(前出・スポーツ紙記者)

 当時は塚原夫妻による実力のある選手への引き抜き行為が横行し、世界選手権の代表7人中3人が彼らの運営する朝日生命体操クラブ所属の選手となっていた。

「朝日生命の選手の採点を優遇したり、本当にやりたい放題でした。このボイコット事件の責任をとって塚原光男氏は女子競技委員長を辞任しました。

 ですが、塚原夫妻はその後すぐに復権し、女子の日本代表が朝日生命体操クラブの選手で占められるほど、体操界を牛耳っていきました」(同・スポーツ紙記者)

記者の質問にしどろもどろになる山本専務理事(左)と遠藤常務理事(右)
記者の質問にしどろもどろになる山本専務理事(左)と遠藤常務理事(右)

 体操協会は、なぜこのようなパワハラ問題が起きてしまったのかを改めて検証する『特別調査委員会』と、第三者委員会から受けた提言を遂行するための『提言事項検討委員会』の設置を決定。特別調査委の調査結果次第では、改めて塚原夫妻に対して懲戒処分が下る可能性も……。

「結局、今回の騒動が起きても協会の体質は変わらなかったということです。塚原夫妻が“私たちを処分したら協会を訴える”と、脅しともとれるような発言をしたという話もあります。

 協会も不透明な資金の流れなど突かれたら痛いところがあるようで、彼らに強く出られない。おそらく処分されないでしょうね」(前出・体操クラブ関係者)

 膿を出し切れなかった体操協会に、世間の厳しい目が光っている─。