事件があったマンション。周辺は住宅街だが近隣との付き合いはほとんどなかったようで……

 執行猶予はつかなかった。

 2018年1月11日、愛知県豊田市の自宅で、母親が3つ子の次男(生後11か月)を床に叩きつけて死亡させた事件。傷害致死の疑いで逮捕された松下園理被告(30)に対する裁判員裁判の判決が3月15日、名古屋地裁岡崎支部で言い渡された。

 懲役3年6か月の実刑判決。

 裁判で明らかになったのは、3つ子を育てる負担の重さだった。授乳・ミルクは1日で3人合わせて最低でも24回。しかも時間はバラバラ。おむつ交換も同様で、睡眠時間はたったの1時間というありさま。まともな判断力を失う中で、3つ子の中で成長が遅く、ミルクの吐き戻しも多い次男を疎ましく思うようになっていった。

 やがて訪れる限界……。

 泣きやまない次男を2度にわたり畳に叩きつけ、脳挫傷で命を奪ったのである。

同情の声、厳しい声

 名古屋鉄道梅坪駅から徒歩20分ほど。4階建て賃貸マンションに、夫婦と3つ子の一家は暮らしていた。

「“何かあったら手伝うから”と声をかけた知り合いがいたんだけど、若い子だし、近隣との付き合いも希薄な賃貸マンションだから、お願いすることもできなかったんだろうね。何かしてあげられることがあったと思うんだけど……」

 そう表情を曇らせる近隣住民もいたが、複数の住人は、

「3つ子がいたことすら知らなかった。母親の姿もほとんど見ていない」

 と口をそろえる。

 3月22日に保釈された松下被告は、弁護士を通し「執行猶予判決を求めて、控訴させていただくことにしました」とコメントを発表した。

 判決に対しインターネット上では同情論が湧き起こり、「母親が子育てしながら罪を償えるように」と減刑を求める署名活動が始まった。その数は約3万4000人(3月29日午後7時40分現在)。