言葉は生き物。発した人の人生を、生かしもすれば壊しもする──。『ナインティナイン』の岡村隆史がラジオで発した“風俗発言”では女性差別という批判にさらされた。言動に注目が集まるタレントたちが味わった“天国から地獄”のきっかけになった言葉とは?

16歳で2度の連続失言

 若き失言クイーン。そんな称号(?)を与えたくなるのが、広瀬すず(21)だ。’15年6月には『とんねるずのみなさんのおかげでした』(フジテレビ系)での発言が炎上。その経緯は、こういうものだった。

 理想のデートについて「すごいドライなんです。イルミネーションとか夜景に興味がない」と話すと、石橋貴明が光つながりで「テレビ局の照明さんを見るとどう思うの」と質問。広瀬は、

「どうして生まれてから大人になったときに、照明さんになろうと思ったんだろうって」

 と答えた。これがウケたことから、さらに、

「録音部さんとかもすっごい腕疲れるのに、なんで自分の人生を女優さんの声を録ることにかけてるんだろうと」「ロケバスさんとかも運転して寝て、どうして運転しようと思ったのか……」

 とんねるずのふたりにも乗せられるかたちで、連発。しかし、こうした発言をスタッフ軽視だと感じた人たちがネットで叩き、彼女は翌日、ツイッターで「いつもお世話になっているスタッフの方々に誤解を与えるような発言をしてしまい申し訳ありませんでした」と謝罪した。

 ちなみに、その日は彼女の誕生日でもあり『みなおか』は16歳最後の日の放送。そして、実は、その1週間前に失言デビュー(?)をしていた。『VS嵐』(フジテレビ系)で大野智の年齢が34歳だと知ったあと「ええー」「もうちょっと上だと思ってた」「40歳くらい」と語り、大野を「俺、そんな老けてる?」と、へこませたのだ。

 このときもツイッターで「いやあの勝手なイメージで(略)カメラ止まってても 謝り続けてました」と釈明したが、嵐ファンからは総スカン。ただ「彼女から見たら34歳も40歳も変わらないでしょ」という擁護の声も出た。

イメージダウンにならないのは大物の証

 実際、彼女は「勝手なイメージ」を語っただけだし『みなおか』にしても同じだ。自分と違う立場の人について、不思議に感じたことを口にしたにすぎない。それこそ、マリー・アントワネットの発言として広まった「パンがないならお菓子を食べればいいじゃない」に近いものである。

 もっとも、空気を読むタイプの人は、そう思っても言わないものだ。彼女は3人きょうだいの末っ子で、実は末っ子には「自信」「大胆」「目立ちたがり」「熟考より直感」といった特徴がある。いかにも失言につながりそうな性格なのだ。

 また、言ったのが彼女でなければ、ここまで話は大きくならなかっただろう。若くしてちやほやされまくる人の発言だからこそ「裏方への上から目線っぽさ」や「年上への失礼な感じ」が増幅され、世間の怒りを生んだのだ。

 しかし、彼女はこんな騒動などものともせずに、朝ドラ女優にまで上りつめていった。そう、失言が話題になり、しかもイメージダウンにならないのは大物の証だ。このうえは故・樹木希林さんや加賀まりこのような、何を言っても許される女優を目指してみてはどうだろう。

(文/宝泉薫)


ほうせんかおる アイドル、二次元、流行歌、ダイエットなど、さまざまなジャンルをテーマに執筆。近著に『平成「一発屋」見聞録』(言視社)『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)