控除を活用して医療費を取り戻す
大きな病気にかかって手術後、長期入院などをするとどこまでも医療費がかかりそうな気がしますが、一定額以上は還付されるので安心です。
この制度は高額療養費制度といい、収入に応じて1か月当たりの自己負担額の上限が決まります。
制度を使えば、ひとり当たりの自己負担額が2万1000円を超えたら世帯合算も可能です。治療を受けた医療機関が複数ある場合でもすべてを合算できます。
また、高額療養費の自己負担額を超える月が直近の1年以内に3回以上あった場合には、多数回該当となり4回目からは限度額がさらに引き下げられます。
いずれにしても、世帯合算でお金を取り戻すには届け出が必要になります。忘れずに健康保険の窓口に申請しましょう。
また、世帯合算できるのは家族で同じ健康保険に入っていることが条件です。扶養家族であれば、子どもからの仕送りで暮らす親や離れて暮らす子も対象。一方、共働きなどで、夫婦が別々の健康保険に入っている場合は合算できないので注意が必要です。
1年間に一定以上の医療費を支払った場合、所得が控除される医療費控除やセルフメディケーション税制をぜひ利用しましょう。
医療費控除は対象となる項目が幅広いぶん、実際に支払った医療費が10万円以上(総所得200万円未満の場合は総所得の5%)と金額のハードルが高くなります。
保険適用でなくても、“治療のための歯列矯正”やインプラント、目のレーシック手術なども対象となります。
人間ドックや健康診断などは医療費控除の対象にはなりませんが、その中で疾病が見つかり治療を行うことになった場合にもやはり対象となります。
一方、セルフメディケーション税制は「健康診断などをきちんと受けている人」が「一定以上の効果を発揮する市販薬」を購入した場合に受けられる所得控除で、医療費控除よりも対象が狭いぶん、1万2000円以上と金額のハードルは低くなっています。申告をする際には、1年分の医薬品を買ったときの領収書やレシートをもとに、所定の用紙に記入します。
最初の条件となる健康診断などは、特定健康診査(メタボ健診)のほか、予防接種やがん検診などいずれかを過去1年間に受けていれば控除の対象となります。
市販薬では、医療用医薬品で使われている薬効成分が含まれている市販薬(OTC)で、スイッチOTC医薬品と呼ばれるものが対象となります。薬のパッケージに「セルフメディケーション税控除対象」と書かれていたりしますので、探してみてください。現在対象の市販薬は83成分を含む1600品目にも上ります。
スイッチOTCといわれると難しい薬のように感じるかもしれませんが、鎮痛薬のロキソニンやアレルギー薬のアレグラ、口内炎やニキビの薬など、身近な薬もたくさんあります。よく服用する人であればすぐに1万2000円ぐらいにはなるでしょう。
ただし、
「医療費控除とセルフメディケーション税制は併用ができません。最初から、どちらかに決めてしまうのではなく、医療費控除もセルフメディケーション税制もどちらも頭に入れておくことが、まずは節約の第一歩。
思わぬ病気にかかって入院することもありえますので、とりあえず病院などに払った医療費の領収書と明細、市販薬を買ったときのレシートは両方とも保管しておくようにしましょう」
いずれも家族も対象になることを忘れずに。
年度末に計算してみて、どちらで申告するのがベストなのかをよく考えて、賢く節約すべし。
(取材・文/鷲頭文子)
監修=植田美津恵さん ◎医学ジャーナリスト・医学博士。愛知医科大学客員教授。東京通信大学准教授。厚生労働省研究班委員、経済産業省委員会座長。テレビのコメンテーターや雑誌などでも活躍。『江戸健康学』、『戦国武将の健康術』など、著書多数。