《正直、思い当たる節がないんですけど、通勤時の満員電車ですかね。特に年明けから満員電車になっていますので、そこで感染したのかな…》

 1月18日、テレビ朝日系『グッド!モーニング』内で、全国で猛威を振るう新型コロナウイルス・オミクロン株に関する特集が放送された。その中で登場した、陽性判定を受けたという30代男性のインタビューが大きな反響を呼んでいる。

 “会食もしなかった”という男性が自身で疑った感染経路というのが「週2回の通勤時の満員電車」。つまりは混み合う電車の中でコロナに感染した“かも”と話したのだ。番組ではさらに、別の電車利用客に取材して《周りで、せきする人がいたら少し敏感になります》《(電車通勤は)怖いけど、やらなきゃダメかな》といった声も紹介。

 あくまで男性による“推測”ではあるものの、あらためて「満員電車」も感染経路になりうると思わせるような内容を放送したのだ。するとーー、

「瞬く間にSNSでは“満員電車”がトレンド入り。ネット上では放送を見てか、“やっぱり電車でも感染する”“オミクロンが空気感染するなら”などと不安の声が広がっています。一方で、“2年も経って、やっと満員電車”“これは世紀の大発見”と、内容に呆れる声の両方が見受けられます。

 東京都内外を通学・通勤する人は毎日1000万人いるとされます。仮に満員電車で感染するとなれば利用者が不安がるのは当然ですし、反響が大きくなったのも至極当然と言えます」(全国紙記者)

 国土交通省では《鉄道を安心してご利用いただくためのお客様への3つのお願い》として、《1.マスクを着用し、会話は控えめにしていただく、2.車内換気へのご理解・ご協力をいただく、3.混雑を避けた時間帯・車両をご利用いただく》を各鉄道事業者と協力して対策に取り組んでいる。

 そして乗客の自粛と協力もあってか、コロナの感染拡大から2年経とうとしているが、電車内で集団感染やクラスターが起きたという事例は聞こえてこない。そんな中で打たれた、テレ朝の《感染経路は「満員電車かも」》報道だった。

満員電車で感染は起こらない?

 すると1月20日、「人流抑制ではなく人数制限だ」と訴える、基本対処方針分科会の尾身茂会長による見解を元にオミクロン株の特集を組んだフジテレビ系『めざまし8』。すると同局の永島優美アナが「私も満員電車で、これ本当に大丈夫かな、怖いなって思いをしながら帰ることも多い。どうなんでしょうか?」と、あえて“満員電車”というキーワードを用いたような場面も。

 この質問に対して、番組に出演した感染制御学などが専門の東邦大学の小林いんてつ教授は、

《要するに人が動いたら感染するのか、いや、人が動いても人が集まっても感染しない場所では感染が起こらない。例えば満員電車とか、そういう所でもみなさんがマスクをして静かにしている分には感染は起こらない》

 と、決して人が密集する満員電車だからといって感染が起きるわけではない、と感染制御学の観点から分析。永島アナの、いや、視聴者の不安に答えたのだった。前出の全国紙記者は、

「テレ朝の“満員電車かも”がバズったからこそ、フジも注目して重ねたように見えましたね。感染力が高いとされるオミクロン株だけに、みなが不安と疑念を抱えながら生活を送り、私も満員電車に乗っています。

 近くに咳をしていたり体調が悪そうな乗客がいたら、距離をとりたくもなりますよね。ただ、“満員電車かも”という不確定なインタビューで番組を作っては、人によっては“煽り”と捉えられても仕方がないのかなと(苦笑)」