水谷は40年以上、数字のとれる主演俳優であり続ける男だが、それゆえ、芝居へのこだわりも強い。そんな男の「相棒」には主役を立てる謙虚さが常に求められる。大ファンだった寺脇は当初、自然にそういう振る舞いができたのだろう。

「“シン亀山薫”でございます!」

 ところが、役者は大なり小なり、ヒーロー願望を持っている。寺脇もまたしかり、いや、人一倍なのだ。実は彼、水谷だけでなく、ルパン三世の大ファンでもある。今年4月に『ノンストップ!』に出演したときも、

「ルパンになりたい、という一心から『相棒』というドラマの亀山薫も、ルパンを意識して演じました」

 と、語っていた。刑事役なのに泥棒を意識とはこれいかに、というツッコミはさておき、自分もヒーローであろうとする「意識」がもしかしたら前に出すぎたのかもしれない。また、水谷がそこを許容したとしても、周囲が気にしてしまった可能性もある。それゆえ、卒業と不仲説が結びついたとも考えられるわけだ。

 そこで気になるのが、今回のコメントである。寺脇は水谷との再共演を「夢のような時間」としつつ、

「仮面ライダー1号が帰ってきたように、相棒1号も帰って参ります! 今、はやりの言葉にすると“シン亀山薫”でございます!」

 と、はしゃぎぎみに語っている。そういえば、仮面ライダーもヒーローだ。根っから、こういうものが好きなのだろう。

 ただ『相棒』における絶対的ヒーローはあくまで水谷だ。再共演にあたっては、寺脇がヒーロー願望を控えめにしたほうがうまくいくのでは──。

PROFILE●宝泉薫(ほうせん・かおる)アイドル、二次元、流行歌、ダイエットなど、さまざまなジャンルをテーマに執筆。近著に『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)