目次
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ー 約30歳差、阿部が気になっていること
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ー 熱量になんとか食らいつこうと

磯村勇斗(以下、磯村)「ニューヨークはいかがでしたか?」

阿部寛(以下、阿部)「人がいっぱいで、昔の銀座みたいだったね。びっくりした」

 撮影中、「雑談をしているような雰囲気で」とカメラマンがリクエストすると、こんな会話が始まった。8月26日公開の映画『異動辞令は音楽隊!』で共演した阿部寛磯村勇斗

 今作はニューヨーク・アジアン映画祭でワールドプレミア上映され、阿部はアジアでもっとも活躍する俳優に与えられるスター・アジア賞を受賞。そのときのニューヨーク滞在エピソードを話すふたりの様子は、撮影中ということを忘れるほど、とてもナチュラルだ。

 阿部は、犯罪捜査一筋の鬼刑事だったが音楽隊へ異動となり、初心者にもかかわらずドラムを担当することになる主人公、成瀬司役。成瀬同様、ドラム初心者の阿部は3か月の猛特訓をへて、見事なスティックさばきを披露している。

 対する磯村は、刑事時代の成瀬の部下・坂本祥太役。コンプライアンスを無視して強行捜査をする成瀬に、「昔と今は違うと思います」と時おり反抗的な態度をとる若手刑事だ。物語は、成瀬の音楽隊での奮闘ぶりを主軸に、刑事時代に犯人を逮捕できなかったアポ電強盗事件がサブストーリーとして描かれる。

 完成作を見て、お互いのシーンについての感想を聞くと、

磯村「成瀬がドラムと向き合うシーンや葛藤する姿に、人生はやり直せるんだなって僕自身がとても勇気をもらって。一観客として、阿部さん=成瀬が本当にすてきで感動しました」

阿部寛 撮影/廣瀬靖士
阿部寛 撮影/廣瀬靖士

阿部撮影中はドラムを叩くことに一生懸命で、そっちばかりに気持ちが行ってたんだけど(笑)。完成した作品を見たら、難しい役なのに磯村くんがいろいろ繊細な演技をしていて、それがすごく効いていた。クライマックスの演奏会でも、客席から見つめる坂本の演技をしっかりやってくれたから、エンターテインメントとして素晴らしいものになったし。すごくうれしかったですね」

 周りのことは考えず捜査に猛進する昭和気質な成瀬と、ルールに忠実な坂本。対極にいる2人の関係は成瀬の異動で徐々に変化していき、アポ電強盗事件の捜査を進展させていく。

阿部「坂本には、音楽隊と捜査一課をつなぐ大事な役目があって、そこを磯村くんがきっちりやってくれたんで、感謝してます。よく覚えているのは、成瀬が異動したのに捜査会議に乗り込んで、つまみ出されながら“坂本ー! 西田(主犯だと成瀬が信じる男)を張れー!!”と叫ぶシーン。実は、坂本をすごく頼りにしてる(笑)」

磯村「坂本は、成瀬の暴言やコンプラを無視するところがイヤだけど、刑事としての勘や鋭い嗅覚に憧れがあったんだろうなと、演じる中で感じて。それは単純に、僕の阿部さんに対する尊敬の気持ちも含まれていたのかなと解釈してます(笑)

約30歳差、阿部が気になっていること

 撮影は1年前の夏。愛知県豊橋市、豊川市、蒲郡市、静岡県湖西市にて、オールロケで行われた。撮影時のエピソードを聞くと、

磯村「現場で、阿部さんがカブトムシを見つけてポケットに入れていたという噂が……」

阿部「夏場の撮影だったので、本番直前にクワガタが肩に飛んできて、それをポケットの中に入れたんだよ。そしたらそれを照明さんが見ていて、これも飛んできましたってカブトムシ3匹くれた(笑)」

 ここで、お互いに聞いてみたいことを尋ねると、阿部から「若い人にとって、自分は年齢的にどれくらい遠いのか知りたい」という質問が。

阿部「自分が若いころ、上の世代の俳優さんってすっごく大人に見えて。20代半ばのころに勝新太郎さんとお会いしたときは、“もう見てるだけでいいや”“できるだけ近づかないでおこう”って思ってた(笑)。めっちゃもったいない話なんだけど。今はそのころと社会も変わっているし、15歳くらい感覚的に近くなっているのかなと思うんだけど。どんな感じ?」

磯村「自分はもうすぐ30歳というのもあって、50代の方は近いというか、まだお話しさせてもらえるのかなという感覚ですね。父親より年上の方だと、年齢的に遠い感覚になるのかもしれないです」