「グレープフルーツダイエットを始めて、ぐんぐん体重が減ったと教えてくれました。独身だった伯母は、もともとオシャレが好きな人。少しふっくらした身体を気にしていて、それまでも流行のダイエットによく挑戦していたので、痩せたと聞いて“よかったね”と一緒に喜びました」

 でも、思い返せば、それはダイエットの効果ではなく、胃がんによる異変だったのではないか。

何を食べるかより「食べ方」が重要

「どうして喜んでしまったのだろうと、今でも本当に後悔しています。冷静に考えたら、1つの食材だけ食べる“単品ダイエット”は健康的に痩せる効果はなく、身体に何か支障が起きていると気づけたはず。そのときに検査をしていれば、伯母はがんを早期発見できたかもしれません」

 胃の全摘手術の後、自宅に戻った伯母。一人暮らしをし、身の回りのことはすべて自分でこなしていたが、食事後に意識を失って倒れることが続いた。

水野裕子が“ママ”と呼んで慕った伯母。母のようであり、女友達のようでもある存在(写真提供/水野裕子)
水野裕子が“ママ”と呼んで慕った伯母。母のようであり、女友達のようでもある存在(写真提供/水野裕子)
【写真】水野裕子が母のように慕い、元気だったころの叔母

「伯母のことがきっかけで知ったのですが、胃を全摘すると食べたものが食道から直接腸にいくので、血糖値の急激な変化が起きて意識障害を起こすことがあるんです。伯母自身も気をつけていたとは思いますが、術後の食事の仕方を正しく理解できてなかったのかなと思いました」

 水野さんは、本を読み、胃の全摘後の食事について独学。得た知識で伯母の食生活をサポートすることにした。

 例えば、一般的に“おかゆ”は消化によい食べ物と思われているが、胃を摘出した伯母にとっては、必ずしもよいとはいえない。一気に食べると血糖値が急上昇するので、ゆっくり少しずつ食べる必要があるとわかった。

「何を食べるかより食べ方が重要だと知りました。栄養バランスや身体によい食事については、なんとなく知っているつもりでいましたが、それはあくまで健康な人に対するもの。病気や年齢などによって、望ましい食事に違いがあることを知り、より専門的に学びたいと思うようになりました」

 その経験が大学で栄養学を学ぶという挑戦への後押しとなった。