劇団からは当初、懲戒委員会の場でハラスメントに関する聴取があると説明があったものの、退団まで懲戒委員会が開かれることはなく、《劇団幹部とのやり取りは弁護士などの第三者が立ち会うことはなく、常に密室で行われた》と振り返る。

 手記を受け、とりわけ演劇界がザワついた箇所が、A氏の母が『文藝春秋』編集部に回答した内容だ。

「アタシってわかるじゃないの」

《「最初の段階で原田さんからきちんと謝罪があれば良かったのに、
(劇団幹部で演出家の)先生から『反省するどころか横柄な態度を取っていた』と聞き、何なのと。謝罪が遅すぎました。この先生には、今回の件を、一から百まで相談しています。劇団に対して『文春に言う』と話したかもしれませんが、これは先生のアドバイスです。ただ、執拗には言っていませんし、私の鶴の一声で辞めさせるような会社ではない」》

「劇団幹部で演出家の先生」とは誰を指すのか――。

 演劇関係者が声を潜める。

「A先生説が飛び交っています。仲間内で『あれってA先生のことだよね?』『でもA先生は劇団幹部に当たるのかなあ』『あの人ならやりかねない』といった会話で盛り上がりました」

「A先生」とは、日本ミュージカル演出の第一人者であり、原田氏と同じく宝塚歌劇団の座付き演出家出身の“大御所中の大御所”である。

「『文藝春秋』の報道後、Aさん自らが演劇関係者に『あの書き方じゃ、(「劇団幹部」は)アタシってわかるじゃないの』と言い回っていました。つまり自分で認めているようなもの。原田さんは近年、宝塚以外の外部公演で活躍の場を広げており、海外公演も控えていました。Aさんが後輩の躍進を快く思っていなかった節があり、『週刊文春』の原田氏セクハラ報道に喜び周りに『読んだ?読んだ?』と触れ回っていたと聞きます」(宝塚関係者)

 さらに、手記の余波は政界へも広がっている。手記では、原田氏がA氏と知り合うきっかけは、真矢みき氏の主治医からの紹介だったことが明かされている。実はこの人、昨年7月8日に凶弾に倒れた安倍晋三元首相の主治医だという。

「有名人が御用達の都内大病院に勤務し、潰瘍性大腸炎を患っていた安倍氏の主治医を担当。また芸能界にもパイプがあり、2019年に合成麻薬の所持で逮捕された沢尻エリカを自身の病院で匿っていたことが報じられたこともありました」

 原田氏は4月17日付で、神戸地裁に歌劇団に対して復籍などを求める訴状を提出。間もなく宝塚側の答弁書が提出されるとみられる。