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ー ワンナイトラブ、“好き”連呼はいまや「ツッコミポイント」

 第6話(8月14日放送)までの平均世帯視聴率が5・6%と低空飛行を続ける月9ドラマ『真夏のシンデレラ』。このままいくと、全話平均世帯視聴率6・1%という『海月姫』('18年)の月9ワースト記録を更新するのではと不安視する声も。しかし、真夏の海を舞台にした男女8人のラブストーリーに、「このキラキラ感が新鮮」など、SNS上では若者たちを中心に評価する声も相次いでいる。

「見て思ったのは、話の展開がまさに'80〜'90年代のトレンディードラマ。『君といた夏』('94年)とか『ビーチボーイズ』('97年)のような、まさに真夏のフジ王道月9ドラマなんですが、それを知らない若い世代には1周回って新鮮に映っているのではないでしょうか」

『真夏のシンデレラ』公式HPより
『真夏のシンデレラ』公式HPより

 こう話してくれたのは、コラムニストとして多数の媒体でドラマの記事を執筆している小林久乃さん。ドラマが盛り上がりを見せているのは、近年、夏の恋愛ものにあまり見られなくなったシチュエーションも要因なのではと分析する。

ワンナイトラブ、“好き”連呼はいまや「ツッコミポイント」

神奈川県・江の島の海で、運命的に出会った男女がお祭りに行ったり、花火をしたりお酒を飲んだりと夏要素が満載。今の10〜20代は肌が焼けるのが嫌とか、そういった理由からあまり海に行かなくなっていると聞きます。

 40代以上の人はわかると思うのですが、夏といえば恋人や友達と海に行くというのはまさに定番。そんなシチュエーションの中で恋愛が展開するという話は最近少なくなりましたし、ベタな夏のキラキラ感が新鮮に感じるのかもしれません」(小林さん、以下同)

 今ではなかなか見られない、ツッコミどころ満載の展開も、視聴者に刺さる理由だそう。

「最近の恋愛ものって、告白のシーンとか、わりと少ないですよね。このドラマでは、まだ好きでもない幼なじみの女の子に突然キスをしたり、勢いでワンナイトラブをしてしまったり、相手に“好き”って連呼したりと、ツッコみたくなるポイントがやたらと出てくる。でも、これってトレンディードラマでは当たり前で、『東京ラブストーリー』なんてリカ(鈴木保奈美)が完治(織田裕二)に“カンチ、セックスしよ”って言っていたじゃないですか。そんなヒロインは今はもういない(笑)。そういった部分も若い子には新しかったり、エモく映るのかもしれませんし、ありえない展開が面白くてSNSで話題となっているのだと思います」

反町隆史や竹野内豊らが出演した『ビーチボーイズ』は、最高視聴率26.5%を記録
反町隆史や竹野内豊らが出演した『ビーチボーイズ』は、最高視聴率26.5%を記録

 視聴率こそひと桁だが、見逃し無料配信動画サービス『TVer』ではお気に入り登録者数が100万人を突破。7月クールのドラマでは、『VIVANT』(TBS系)、『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』(日本テレビ系)に続き3位の登録者数となっている。

「今の10〜20代ってテレビを見なくなったといわれますが、『TVer』などがあったりと視聴環境がいろいろあるので、見ていないわけじゃないんです。だから、ドラマの人気イコール視聴率っていうのはもう関係ない時代なんだと思います。私も毎週見ていますが、仕事や学校が始まって少し気が重い月曜の夜に、ツッコみながら楽しめるラブストーリーはちょうどいい。40代以上にはどこか懐かしくて、若い世代にはエモく新鮮に感じるトレンディードラマをオマージュしたような作品は、これからも出てくるのではと思います」

小林久乃 コラムニストで筋金入りのドラマ好き。著書に『ベスト・オブ・平成ドラマ!TVドラマをもっと楽しく観る方法』(青春出版社)など