作り手もそのモンスター感を生かそうとする。'19年のドラマ『トクサツガガガ』(NHK総合)では、ヒロインに毒舌的な名言を吐く小学生「ダミアン」を演じた。あだ名の由来はホラー映画『オーメン』に登場する「悪魔の子」だ。そんな芸風を支えていたのがあの声としゃべり方なので、声変わりによる影響は小さくない。いわば、最大の武器を失ったのだ。

転機というより“危機”

 それこそ、今から半世紀前、子どもならではのハイトーンボーカルでヒット曲を連発したフィンガー5の晃は声変わりを遅らせる目的でスタッフにホルモン注射をすすめられたという。また、年齢もジャンル(?)も違うが、戦場カメラマンの渡部陽一があのしゃべり方をやめたら、タレントとしての需要はなくなるだろう。

 つまり、寺田にとっての声変わりは転機というより危機かもしれないのである。

 とはいえ『らんまん』などでの芝居を見る限り、それは杞憂に終わる気もしている。正統派としてやっていけそうなスキルや雰囲気を感じるからで、そういう意味では彼も新世代なのだ。

 神木の世代あたりから、大人の役者への転換をうまくやれる子役が増えてきた。加藤清史郎しかり、芦田愛菜、鈴木福しかりだ。

 いずれも、子どもっぽさとのギャップが高い評価につながる分、大人になると飽きられがちという子役人気の本質をわかったうえで、浮つくことなく、人生経験も含めたキャリアを着実に積み上げようとする姿勢が共通している。

 ただ、寺田の場合、最近では珍しいほどアンチもいる子役だったわけで、そこがメンタルに及ぼす影響が心配でもあった。が、そういう中でつぶれることなく成長してきたこと自体、まさに「心」がしっかりとしている証拠だ。

 彼が大人の役者への転換に成功するとき「子役は大成しない」とまで言われた時代は完全に過去のものになるだろう。

ほうせん・かおる アイドル、二次元、流行歌、ダイエットなど、さまざまなジャンルをテーマに執筆。著書に『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)。