心臓リスクの高い人は主治医に相談を
もし、すでにアントラサイクリン系の抗がん剤を使ったことがある人でエコー検査を一度も受けたことがないなどの不安がある場合は、主治医に心臓の検査をしてほしい旨を伝えてみよう。
「特に心不全を引き起こしやすい高齢、高血圧、糖尿病、慢性腎臓病、脂質異常症、喫煙、肥満、心臓の持病などのリスクがある人は、主治医と相談しながら経過観察を行うことが大切です」
また、リスクを減らすためには、患者自身でも健康管理を行う必要があると南先生。
「抗がん剤治療を行う際は、肥満や高血圧、喫煙などの生活習慣を見直すことが欠かせません。アントラサイクリン系を以前に使用したことがある場合も当然、心不全のリスクが高まりますので、自分が使った薬をメモしておいて、別の病院にかかる場合は担当医に伝えるようにしましょう」
さらに昨今、アントラサイクリン系抗がん剤以外にも、新しく登場しているがんの治療薬の中に心筋障害を起こしやすい薬が増えているという。
「免疫ががん細胞を攻撃する力を保つ免疫チェックポイント阻害薬や、新しいタイプの抗がん剤であるトラスツズマブといった分子標的薬にもアントラサイクリン系と同様の副作用を引き起こす薬剤があります」
これらはさまざまながんに使われている薬のため、患者は医師に任せきりにせず、使っている薬のリスクを把握し、医師と相談しながら治療を進めていくことが大切だ。
いま私たちにできること
・自分の抗がん剤の種類を確認
・リスクが高い人は主治医に心臓の検査を依頼する
・肥満や高血圧、喫煙などの生活習慣を見直す
10人に1人が心臓病で亡くなっていた
新たに抗がん剤治療を始めた人のうち、4サイクル(3~4か月)以内に亡くなった141人の死因を調べたところ、大半はがんによって亡くなっていたが、およそ1割の人は心臓などに血栓ができたことが原因で亡くなっていたことがアメリカの研究で判明した。
取材・文/井上真規子