私たちは気を抜くとヤバいことをする

 今回のことを契機に、『海猿』(小学館)の作者・佐藤秀峰氏をはじめとした人気漫画家たちがメディアミックスにおいて、原作者がどれだけ軽んじられているか内情を告白しています。

 経験者たちの苦渋の告白により、今後、漫画がドラマ化されるときは、原作者は遠慮せずにいろいろな条件を言えるようになるでしょう。それは当然の権利なわけですし、喜ばしいことですが、原作者とテレビ局の間で調整をする編集者の負担はかなり増えることでしょう。

 特に問題なのはテレビ局との間に「話が違う」ということが起きた時。編集者は原作者を守るために間に入るでしょう。しかし、実際にドラマを作るのはテレビ局ですから、いろいろな理由をつけて思い通りにすることは不可能ではないでしょう。こういう時、編集者はテレビと原作者の間で板挟みになることが予想されますし、原作者との信頼関係にヒビが入ってしまう可能性があります。こうなると、真面目に取り組む編集者ほど心身ともに追い込まれてしまうのではないでしょうか。また人を介してやりとりすると、微妙に話のニュアンスがずれていったり、意図的に話をねじまげる人がいないとは言い切れない。そういったことを防ぐためには、やりとりを可視化させることがポイントになるのではないでしょうか。

 具体的に言うと

ドラマ化にあたって罰則も明記した契約書を弁護士の指導の下に交わすこと

・出来上がった脚本を原作者に見せて、ドラマ化の許可をもらうこと(原作者も許可するかどうかの判断がしやすくなるでしょうし、脚本家に対する誹謗中傷を防ぐ効果もあります。この方法をとるなら、未完の作品はドラマ化の対象外となります)

・原作者の代理人を編集者にするのではなく、原作者本人が代理人を立てて、原作者の利益を守ることに専心すること

 などが思いつきます。

 私は人は誰しもヤバいものとだと思っています。善良な人でも、大組織に属していると会社の名前を武器に居丈高にふるまったり、権力を手にするとパワハラやセクハラを行うこともある。ですから、「私たちは気を抜くとヤバいことをする」という前提で、約束が守られなかったら、違反があったらどうするのかに備えてしっかり契約し、役割分担をはっきりさせなくてはいけないのではないでしょうか。かわいそうだった、さみしいなど、お涙頂戴の言葉で風化させていいことでは、決してないと思うのです。

<プロフィール>
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ。会社員を経てフリーライターに。『サイゾーウーマン』『週刊SPA!』『GINGER』『steady.』などにタレント論、女子アナ批評を寄稿。また、自身のブログ、ツイッターで婚活に悩む男女の相談に応えている。2015年に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)を発表し、異例の女性向け婚活本として話題に。好きな言葉は「勝てば官軍、負ければ賊軍」