「洋二スタイル」がカーニバルのトレンドに

 サンバダンサー特有の、羽根を背負う極彩色できらびやかな衣装は、学生時代に服飾を専攻していたこともあり、なんとすべて洋二さんの自作だとか。

 ひとつの衣装には、300本以上もの羽根や無数のきらびやかなラインストーンなどを手作業でつけるそうだが、「羽根は1本で1500円くらいします。そういった衣装の装飾は20年以上前からコツコツと買い集めたものを使用していますね」

 日本とブラジルにそれぞれ「衣装部屋」があり、日本には30~40着ほどの衣装が保管されているという。

「ブラジルでは団体で踊る人たちには衣装が支給されることもあるんですけど、僕のようにキャスティングとして役名がつくような人たちは、デザイン画をチーム側からもらって、各自でアトリエを探して衣装制作をします」

 だが、洋二さんのように自作ができるダンサーは「ほぼほぼいない」という。

「大学時代からパターンを学んでいて、長いこと衣装を作っていますし、プロと遜色ないと認められているので、自分の分は自分で作らせてもらっています」

 サンバといえば、極限まで肉体美を披露している女性ダンサーでもおなじみだ。だがこれまで、ソロを務める男性ダンサーが、肉体美を披露しつつ羽根を背負うスタイルは、洋二さん以前はほとんどいなかったという。

「最近、デザイナーさんや演出家の方から『これは洋二スタイルだよ』とデザイン画をもらうことも多くて。もう、“僕ありき”でデザインされているんですよね。事実、僕のような羽根を背負って“魅せる”タイプの男性ダンサーのポジションも増えてきて、感慨深いものがあります」

 カーニバルの「本物」になりたいという夢は、すでに叶っている。

 浅草とブラジル、年2回のサンバカーニバルの他にも精力的に活動を続けている洋二さん。

「身体のメンテナンスはしていますが、あちこちガタはきてますよ(笑)。コロナのときは逆に休めたなってくらいで、今はイベントもたくさんありますし、サンバ以外でも、渋谷のクラブでダンサーとして踊っていたり、コンサートのバックダンサーとして呼んでいただいたりするので、週に4、5日は踊り続ける生活が戻ってきています」

『マツコの知らない世界』(TBS系)に出演した際は、マツコ・デラックスと同じ年ということもあり、マツコにそのタフぶりを絶賛されたことも。

 そんな、一点の曇りなき現役ぶりだが、「引き際」を意識することもあるという。

「『参加する勇気』でここまできた自分ですが、『やめる勇気』も大事なのかなと。僕の“現役”ぶりに、友人には『サンバ界の松田聖子だね』って言われたことも。でも僕はどちらかといえば明菜派なんですが……(笑)」

 サンバ界を俯瞰してきたトップランナーとして、今、どのように思うのか。

「誰かに認めてほしいとか『俺を目指してこい』みたいな感じは一切ないんです。ただ自分がやりたくて、 サンバが本当に好きで、本場の土地でどこまで認められるかトライしてみたいっていう気持ちがずっと変わらない。それだけなんです」

 自分が踊りたいから踊り続ける。始めたころから少しも変わらない「情熱」がそこにある。