中国進出報道の裏側

 ほかには、加勢大周が台湾のドラマで人気を博したり、のんが香港のCMで親しまれたりというケースも。ただ、両者とも事務所との独立トラブルから海外に活路を見いだしたという経緯だ。

 つまり、今の前田が再起を本気で目指したり、海外で長期的に活動するほどの切実な理由はない。実際、このオファーについても辞退したことが、記事の最後に明かされているのだが─。にもかかわらず、こうした報道が出るのは彼女の避けられない宿命でもある。というのも、AKB48の初代センターだった彼女は大人数グループの時代を切り開いた立役者。アイドル史においても、天地真理や山口百恵、松田聖子、広末涼子らと並ぶレジェンドだ。

 その分、絶頂期の輝きは容易に超えられず、いくら女優として頑張ってもドラマや映画に興味のない人たちには落ち目にも映ってしまう。そこにうまくつけ込んだのが今回の報道だろう。

 中国進出の話を、食うに困っての窮余の策みたいに煽り、ネットの無料部分では結果を書かずに、有料部分へと誘導。ちょっとあざとい手法だが、お金を払っても読みたい人がいなければ、これも成立しない。前田は今も、天下の文春から「お金になる存在」として認められているわけだ。

 ちなみに、'20年いっぱいで大手芸能プロをやめた彼女は現在フリー。そのあたりもつけ込まれやすいゆえんだが、文春には2月に阿川佐和子対談のゲストとしても登場しているので、関係は悪くないのではないか。5歳の子を抱えるシングルマザーとしても、話題になり、仕事が増えるならそれもよし、ということかもしれない。

 母は強し、である。

ほうせん・かおる アイドル、二次元、流行歌、ダイエットなど、さまざまなジャンルをテーマに執筆。著書に『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)。