百田尚樹の原作は、累計発行部数546万部を突破。同名映画のヒットも記憶に新しい。そんな『永遠の0』が3夜にわたるスペシャルドラマとして放送される。主演は向井理。クールに思われがちなこの男が抱え持つ“本音”に迫る。

映画版のヒットも「比較対象ではない」

向井理
撮影/伊藤和幸
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 向井に出演オファーがあった段階で、すでに映画化(岡田准一主演)も進行していた。

「あんなにヒットするなんて……なんか、後乗り感がありますよね……(笑い)」

 珍しく冗談を飛ばしつつも、映画版は見ていないという。理由を尋ねると、特にないですとクールな答え。

「僕が向き合ってきたのは原作小説。そのおもしろさに引き込まれたひとりなので、単純にその映像化に参加できる喜びだけ。タイトルは一緒ですけど、そもそも違う作品をやる気持ちでいました」

 映画には映画のやり方があり、逆に映画でしかできないやり方もあり、それがハマったのだろうと分析するが、比較対象ではないと言い切る。

ドラマは3夜で7時間もありますから。短期決戦ではないので、すべてにおいて気を引き締めていかないといけない。(映画と)どっちが大変か、なんてわからないですけど、僕は命がけでやったつもりです」

 宮部の人物像を語り紡いでゆく証言者も、原作に忠実。監督は“生々しさ”を追求すべく、撮影は長回しを選んだ。

「カメラマンの大変さを思うと、カットの後半でセリフを噛めない(笑い)。すごく緊張感が出てよかったですね。もちろんフィクションなんですが、“ひょっとしたら、こんなこともあったんじゃないか”と思ってもらえるように」

 昨夏から取材を重ねる中で、向井は“きれいごとではなく、宮部は人殺し”“殺し合いである戦争を絶対に賛美してはいけない”と繰り返し語っていた。

「見る側のエネルギーもすごくいる。見ることで傷つくこともあるかもしれません。でも、そうやって傷つかないとわからないこともあると思うんです。第3夜の最後まで付き合っていただけたら、残さなければいけないメッセージが、必ず見えてくると思います」