sugiuramiyuki
 雑誌『Momoco』(学研)にスカウトされて、芸能界入りした半年後の16歳の頃、大映ドラマ『ヤヌスの鏡』の主演に抜擢された杉浦幸。

 大映ドラマは監督の厳しさでも定評がある。映画で鍛え上げた名監督たちが、名前もない、自分の子どもくらいの若い俳優たちを一人前にするには、厳しさは不可欠だったのだろう。

 『ヤヌスの鏡』ではヒロインが祖母にものさしで叩かれ、折檻を受けるシーンがたびたび登場するが、祖母役のベテラン女優は実際には杉浦が痛くないように手加減して叩いていた。

 杉浦は“痛い”という演技をしなくてはならなかったが、それがうまくできず監督に実際に叩かれることに。

「それが痛い顔だ。オマエのは痛い顔じゃないって、何度も叩かれました(笑い)」

別の監督からは、こんな指示もあった。

「オマエは主役だから、その他大勢の役者たちとはしゃべるな。別格になれ」

 当時、杉浦は普通の女子高に通っていたが、毎日撮影があるため学校を退学していた。同年代が集まる撮影現場が、唯一、楽しさを見いだせる場所だった。

「仲のいい子とでも、しゃべると叱られるんです。みんな楽しそうにしているのを見ながら、いつも1人でした。でも、ド素人すぎる私を鍛えるために監督が考えてくれていたんでしょうね」

 そうやって鍛えられた杉浦の大映ドラマ主演第2作目は、『このこ誰の子?』(フジテレビ系)。

 女子高生のヒロインがレイプされて妊娠。大きなお腹で日本全国を逃げ回るという脚本に、困惑することは『ヤヌス~』以上だったという。

「まず、レイプされるってどういうこと? というところから入りました。周りにレイプされた人なんかいませんから、誰にも聞けないし、当時はインターネットも普及してなかったから困りました」

 それでも彼女はこの役を見事に演じきって、ドラマは平均視聴率20%を叩き出すヒット作となった。

「いま、このドラマを違う形でやれたら、面白いと思う。とにかく大映ドラマは私の青春そのものでした」