「子どものことを想像すると自然と役に入れる状況になって、撮影が終わるころには、子どものことをいつも考えているお母さんに自然になれていたような気がして、うれしかったし、よかったなと思います」

 主演映画『おかあさんの木』(6月6日公開)で、7人の息子を戦地に送り出す母親を演じた。

 オーディションで選ばれた7人の子役に、

「休憩中に、丸刈りに扮装した姿で、現代っ子らしい言動やゲームをしているギャップがかわいくてしょうがなかったです」

 大川悦生原作の同名児童文学を戦後70年記念作品として映画化。太平洋戦争で子どもを次々と兵隊にとられ、そのたびに桐の木を植えて、無事を祈る母の姿を描いた。

「撮影にあたっては、自分は戦争を知らないこと、子どもがいないこともあって、個人的なアイデアや感覚を切り捨てることから始めました。監督やスタッフが思うお母さん像や、原作者の大川さんが描いたお母さんで現場にいたい。誰しもが思い浮かべる理想の母に近づけるよう演じたいと心がけました」

 見た目では割烹着が、手助けのひとつになった。

「白い木綿の割烹着を着ると丸っこいフォルムになって、素直に子どもを抱きしめてあげられる気持ちになり、アイテムを使った形からアプローチすることも大切だと改めて感じました」

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昭和初期の趣ある日本家屋で撮影。縁側でホッとひと息

 激動の時代を生きた日本の母には、女性としての強さ、たくましさ、尊敬の念を抱いた。

「決して弱音を吐かず、耐えている。昔の女性は偉かったなと思います。苦しい時代のもと、心映えの美しさ、一生懸命に耐え生き抜いた人たちを見てもらえたら、うれしいです。そして、そういう方々が、戦争に巻き込まれていく悲しさをあらためて考えるきっかけになれたら、と思います」

 キャリア、実績とも充実した女優人生については、「年々面白くなってきている」と声が弾む。

「いつか日本のおばあちゃん役も私らしく演じられるように年を重ねていけるに違いないと信じて、これからも励みたいと思います」


撮影/高梨俊浩