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 女性の格好をした東大の教授として『アウト×デラックス』(フジテレビ系)などに出演して、注目を集めている安冨歩教授。

 出演した数々の番組では、現在人気を博している“おネエタレント”の、マツコ・デラックスやミッツ・マングローブとも共演した。

「マツコさんは現代の日本に重要な人物だと思うので、以前から注目していました。お会いしてお話しすることができておもしろかったですし、反応や感じ方に筋が通っている方だなと思いました。

 ミッツさんはどんな方かよく知らなかったんですけど“女性装”の意味をしっかりと理解してくださっていたので、話しやすかったですね」

 女装家やホモセクシャル、トランスジェンダーの人がなぜ今、注目されているのか。それは、普通の人と決定的に違っている点があるからだという。

「“当たり前と思っている大前提が崩れる”という経験をしているからです。いい大学に入って、いい就職先で働いてというエリート街道を進んできた人は、こんな経験を1度もしていない。自分の考えがぜんぶ正しいと思っているし、上司や親や政府の言うことが正しいと思っているはず。

 LGBTの人たちは驚天動地の経験をしているので、そんなことは絶対思わないでしょうね。“芸術”というのは思い込みをいかに取り除けるかなんですよ。だから、芸術家にLGBTの人が多いというのもわかる気がしますよね」

 私たちが暮らす日本も、彼らへの理解が十分に進んでいるとはいえないのが現状。カミングアウトできずに悩みを抱え込んでしまう人もいる。そういった人たちに向けて、今後どんな活動をしていくのか聞いてみた。

「それはあまり考えていませんね。彼らは“前提が崩れる”という経験をした、いたってまともであり、暴走しにくい人たちなので、私が改めて何か言うことはないと思います。

 逆にいちばん危険なのは“正常”な人たちのほう。だから、正常な人たちにどうやってメッセージを伝えたらいいかを日々考えています」

 安冨教授が伝えたいメッセージとは、いったいどのようなものなのか。

「マイケル・ジャクソンや宮崎駿さんが成功したことは大きかったです。マイケルの大ヒット曲『スリラー』のPVに描かれているのは“正常な人々”。

 墓場から出てきたはずなのに、ドレスを着ていたり事務員の格好をしていたりするでしょ。あれって普通に暮らしているつもりのあなたたちが実はゾンビじゃないですか? っていう、彼なりのメッセージなんです。『スリラー』のPVを子どもが見ても釘づけになるのは両親や学校の先生、ひいては自分自身の姿が描かれているからなんです。

 そしてジブリの『千と千尋の神隠し』のメーンテーマは“あなたの両親は豚ですよ”というもの。それを親が子どもを連れて映画館に見せに行くわけじゃないですか。これってすごいことですから」

 ストレートではないにせよ、思わずドキッとするような主張をしていきたいということなのだろう。

「意外だったのは、私がこうやって女性装をすると、急にみなさんが話を聞きに来るということ。以前から、自分で本を書いたりと努力はしてきたんですが、これといった効果はなかった。

 でもまさか、着るモノを変えただけでこんなに注目されるなんて驚きです。でも、繰り返しになりますけど、無理してこの格好をしているわけじゃないですからね。あくまで結果です」