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 『日本子守唄協会』が創立15周年を記念して、次世代に歌い継ぐ子守唄を制作。作曲は今年4月に声帯摘出を発表した音楽プロデューサーのつんく♂が担当。

 すでに話題を集めているが、改めて楽曲『うまれてきてくれて ありがとう』に託した3人の思いを、作詞家の湯川れい子と歌い手のクミコに聞いてみた。

クミコ「つんく♂さんから上がってきた『うまれてきてくれてありがとう』を聴いたときは、改めてメロディーメーカーだと思いましたね。私の中ではモーニング娘。の歌みたいにビートが最初に来る曲を作る方というイメージがあったので、美しい旋律に驚きました」

湯川「最初の部分が出てくるまで時間がかかったそうですが、その後はスムーズだったと。私は歌詞を書くときはいつもサビのフレーズで苦しむのですが、今回はつんく♂さんからサビの言葉が《うまれてきてくれてありがとう》に指定されていたので、とてもラクでした」

クミコ「サビ以外の部分も、湯川先生が夜に、このフレーズにはこの言葉を入れようと思っているというメールを送って、翌朝につんく♂さんから返事が来るというやりとりをしていたんですよね」

湯川「はい。作詞にはつんく♂さんの思いも入れさせていただきました。例えば、“抱っこした重み”とか“抱っこした幸せ”といった言葉を入れて、メールを送ったのね。そうしたら、つんく♂さんから《抱っこできない赤ちゃんもいるかもしれない。考えすぎかもしれないけれど、僕はそこまで考えてしまう》と返ってきて。ハッとしました」

クミコ「つんく♂さんは病気をしたことで、生死に関わる考えがガラッと変わったんでしょうね。いろんな赤ちゃんがいるというのは、自分も含めていろんな人間がいるという思いで言ったのでは」

湯川「つんく♂さんにも7歳と4歳のお子さんがいるし、センシティブな思いをしていらっしゃるからこそ、より敏感に反応してくださったんでしょうね。どちらかというとサラッと書いた《ちっちゃな天使》などのフレーズに《感動して泣きました》というお返事をくださったこともありました」

クミコ「打ち合わせは和気あいあいと楽しくやりましたよね。初めこそ、どうやって話したらいいのか緊張したけど、つんく♂さんがパソコンに打った言葉がタブレットに出るよ

うになっていて、全然問題なかったです」

湯川「7月に打ち合わせをしたときには“そうそう”とか“オッケーです”とか口を動かしていらして、まるで声が聞こえてくるようだったわね」

クミコ「カップリング曲もつんく♂さんが作曲してくれました」

湯川「『うまれて~』が生まれたての命に向き合う真剣な曲なので、もう1曲は3~4歳くらいの子どもに向けた軽快な曲がいいなと。どこまでものどかで、楽しい感じの雰囲気にしてほしいと伝えたら、すぐに作ってくださって」

クミコ「レコーディング前につんく♂さんに、どう歌ったらいいかと聞いたら“今日の夜はカレー! みたいな感じ”と返ってきて(笑い)。子どものころのワクワク感が戻ってきて、すごくわかりやすかった」

湯川「タイトルを3人で相談していたら、つんく♂さんがパッと“イルカの子守唄です”とおっしゃって。もう即決! イルカという単語は歌詞の中に1か所しか出てこないけれど、言われてみるとそれしかない! となったのよね」

クミコ「さすがヒットメーカーの勘ですよね! こちらの歌詞では最後の《ママはお仕事なの。もうすぐ帰るから》というフレーズを、つんく♂さんから指摘されたんですよね」

湯川「この1文があることで「お母さんが子どもに申し訳ない気持ちを抱くのでは」と気にしていらして。だけど、今の時代、シングルマザーや仕事をしながら子育てしている人が多いじゃない? 子どもが母親の頑張りをわかったうえで帰りを待っている信頼関係って、すごく大事なことだと思うの。だからあえて、このフレーズは入れました」

クミコ「実は、今まで子守唄は“親子”のものと思っていたんですね。でもPV撮影のときに8か月の赤ちゃんのそばで歌っていたら、その子がずっといい子でいてくれて。気持ちが伝わっているかと思うと、グッとくるものがありました」

湯川「赤ちゃんにとっては他人が歌っても、そこに愛があれば思いは伝わるかと。『うまれて~』の歌詞にも《君はいい子です》と入れたけど、誰かにそう言ってもらえたり、“うまれてきてくれてありがとう”と受け入れてもらえることが、子どもの成長にいちばん大事なことだと思うんです」

クミコ「大人たちみんなで子守唄を子どもたちに歌ってあげる。それが浸透して“子育ては希望”と誰もが言えるような社会にしていきたいですよね」