高齢ともなれば、足・腰・ひざの痛みで病院に駆け込む人も少なくないが、投薬では解決できず、手術もできない場合も多い。でも、どこにでもある「壁」を使うだけで、すっかり痛みが消える方法が今、話題なのだ。
長年にわたりスポーツドクターとしても活躍する渡會公治教授
長年にわたりスポーツドクターとしても活躍する渡會公治教授

「股関節(こかんせつ)を骨折してしまい、以前は歩くのも難しい状態でした。しかし、『かべ体操』を教えてもらって毎日続けてみたら、今では歩くのはもちろん、自転車にも乗れるし、週5日のボランティアにも参加できるようになったんです。本当に人生が変わりました」

 そう話すのは、両膝変形性関節症、変形性脊椎症という病気を抱えながら、右大腿骨頸部の骨折を経験した76歳の女性。

 日常生活の全般で介護を必要とするレベル『要介護4』の認定となった。しかし、『かべ体操』を続けたことで、その半年後にはほとんど介護がいらない状態の『要支援1』まで症状が回復し、介護施設でボランティアができるまでになったというのだ。そして今ではこの女性、『要支援1』も返上している。

■身体に負担をかけない動きを身につける

 この『かべ体操』とは、帝京平成大学大学院教授で整形外科医でもある渡會公治(わたらい・こうじ)氏が発案した体操のこと。かつてオリンピックの日本代表選手団に帯同した経験もあるスポーツドクターだ。20年前に考えついた『かべ体操』は、すでに数千人もの患者に効果があったという。先月3日には、『「かべ体操」であし 腰 ひざの痛みがあっさり消える』(セブン&アイ出版)を上梓している。

「『かべ体操』とは、どこにでもある“壁”を使い、身体の構造に合った、身体に負担をかけない動きを身につけることで痛みを解消するというものです」(渡會氏、以下同)

 そもそも足腰やひざなどを痛めるのは、身体の構造に合っていない動きを繰り返すからだという。

「例えば、長距離ランナーなら走る動作を何万回も繰り返しています。身体の構造に合った動きなら、疲労は生じても構造を壊すようなことは起こりません」

 しかし、足腰の使い方が悪く、徐々に痛めつづけてしまうと、いずれ“障害”という状態に陥り、走れなくなる。治すためには、無理な走り方に気づき、身体の構造に合った走り方に変える必要がある。

「ランナーでない普通の人でも、長年、使い方が悪いと足腰が痛んだり弱くなってきます。足腰が弱くなると、どうしても座ってばかりの生活になりがちです。そうして運動不足になれば、いわゆる“メタボ”の状態になり、肥満、糖尿病、高血圧症などの生活習慣病の原因となります」

 加齢とともに足腰が弱くなるのは仕方のないことと諦めがちだが、何歳になろうと適切な運動を続ければ、高齢者でも運動機能は高まるという。

「もちろん、加齢とともに足腰の筋力は弱くなりますが、身体の構造に合った“上手な身体の使い方”を身につければ痛くなく歩けます」

 では、上手な無理のない歩き方とは?

「よい歩き方のポイントとは、踏み出した足のひざとつま先の向きを同じにすることと、背骨と股関節を使って歩いているかどうかです。背骨、骨盤、股関節を連動させて歩くのが正しい歩き方なのですが、高齢者に多く見られるのが、ひざ下だけを使ってちょこちょこ歩くというもの。脚は骨盤の下というイメージがそうさせるのかもしれませんが、本来は腰と連動してこその脚なのです」

※次ページで「かべコーナースクワット」を紹介します。