暑い日が続き、汗をかく場面が増えてきた。自分の汗のニオイや量、汗じみなどはやっぱり気になるもの。しかし、もっと注意すべきは『かくべきときに、適量をかいているかどうか』ということ。汗と体調管理には深い関係があるのだ。汗を毛嫌いするばかりではなく、体調の善しあしを示すバロメーターとして認識することも重要だ。

 東京・中央区『大手町アビエスクリニック』の早田台史院長によると、汗の出どころは、『汗腺』という部位で、『エクリン汗腺』と『アポクリン汗腺』の2種類がある。

「頭、顔、背中、手足を中心に全身にある『エクリン汗腺』から出る汗の主成分は水で、酸性。汗孔から排出され基本的にニオイはない。一方、わきの下や瞼、鼻、耳の穴、乳首周辺、へそまわり、陰部などに多く存在する『アポクリン汗腺』から出る汗はアルカリ性。水分が少なく、脂肪やタンパク質、アンモニアなどを含んだ粘り気ある汗が毛穴から出ます。無臭ですが肌の細菌が感染し分解されると脂肪酸になりニオイを出す。これが黄色い汗じみや腋臭症(ワキガ)の原因となるのです」

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 また、汗のかき方でも3種類に分類できるという。

(1)体温を調整するためにかく温熱性発汗

(2)緊張したときや不安を感じたときにかく精神性発汗

(3)辛いものを食べたときに顔にかく味覚性発汗

 これらは心配のいらない発汗だが、突然、大量の汗に見舞われたり、誰もが汗をかいているのにひとり汗をかけない場合や、かくべきタイミングで適量の汗が出ていない場合は、病気などの危険サインかもしれないという。早田院長の説明が続く。

【更年期症状】

「『ほてり』と『汗』が気になる場合は、汗を抑える働きがある女性ホルモンのエストロゲンの欠乏に伴う更年期症状が考えられます。妊娠中に汗が増えるのも同じ原因。症状がひどく睡眠にも支障をきたす場合は、ホルモン補充治療も考えなければなりません」

【低血糖】

「『寒気』を感じ『冷や汗』が出る場合は、低血糖を疑いましょう。肌が冷え、後頭部の生え際に汗をかき、震え、吐き気、めまいなども起こる。すぐに飴やジュースなどで糖分を補給しないと危険です」

【熱中症】

「『暑いのに汗が出ない』場合には重度の熱中症の可能性も。体温が40度を超えると、命も危ない状態です。救急車を呼び体温を下げる努力(日陰に運び、霧吹きで身体を冷やし、水分を補給する)を速やかに行ってください。子どもとお年寄りは汗が少ないので熱中症のリスクが上がります」

【ストレスや悩み】

「『いつもより汗のニオイが強い』となると、ストレスや悩みがあると考えられます。特にワキガで悩んでいる方は、ストレスをためないように」

【甲状腺機能亢進症などの病気】

「甲状腺機能亢進症、褐色細胞腫、パーキンソン病、結核、リンパ腫にかかっていたり、その疑いがあると、思った以上に汗をかくことも。『甲状腺機能亢進症』は、甲状腺のホルモンが出すぎると死に至ることもあります」

【原発性多汗症】

「“何の理由もないのに、大量の汗が出る”となれば、『原発性多汗症』を疑ってください。ひどくなるにつれ発汗が我慢できなくなり、日常生活に支障が出る度合いが上がっていきます。持っている紙が手に張りつき、握手をためらうようになったり、服は汗じみで汚れ、ニオイが気になります。わき下の多汗症を抑えるには、ボツリヌス毒素治療が有効ですが、ワキガも伴う場合には、マイクロ波照射治療をすすめています。制汗・消臭両方の治療を行うことができます」

〈プロフィール〉

大手町アビエスクリニック・早田台史院長

専門は内科、外科。約20年間、がんを中心とした外科治療、救急・外傷・災害医療に尽力。経験値と丁寧な説明に定評がある。