「安倍首相による"女性が輝く社会"のスローガンを追い風に、女性の働く環境改善の機運が高まりました。政府という後ろ盾ができたのは大変ありがたい」

 今こそ、ワーママの働きやすい環境をつくるチャンスだと期待を寄せるのは、NPO法人マタハラNet代表の小酒部さやかさん。

 小酒部さんは、自身のマタニティーハラスメント(マタハラ)被害を受けた経験から、女性が安心して働き続ける社会の実現に向けて同団体を設立。日本においてマタハラ問題をメーンストリームに乗せた実績が評価され、今年3月には米国務省による『国際勇気ある女性賞』を日本人で初めて受賞した。現在は政府と連携しながら精力的に活動を続けている。

 女性活躍推進法案についても、政府にマタハラが重点施策として盛り込むことをお願いしたという。

「マタハラとは、働く女性が妊娠や出産をきっかけに会社から精神的・肉体的な嫌がらせをされたり、解雇や雇い止め、自主退職を強要されたりすることです。これは古くて新しい問題。泣き寝入りしていた女性が表面化しなかっただけで、実際には4人に1人が被害を受けたという調査結果もあります」

 マタハラはセクハラ・パワハラと並ぶ3大ハラスメントで、近年は見過ごせない問題として浮上してきた。

「セクハラは異性、パワハラは上司から被害を受けることが多いですが、マタハラは四方八方が敵だらけ。上司や同僚など周囲の人たちからいじめや心ない言葉を受ける。さらに会社から降格人事を受けたり、職場復帰できても出世コースからはずされたり……。少子高齢化が進む中、女性の労働力はますます必要とされますが、こんな状況では女性が仕事を続けられません。マタハラは少子化と日本経済に直結する重大問題なのです」

 また育休を取得した正社員の復帰率は、たったの40%しかないという。

「立場の弱い非正規社員にいたっては4%です。女性社員の6~7割は非正規ですから、どれだけ深刻な事態であるかがわかります」

 育休復帰後は時短勤務となるが、"長時間労働=働き者"という固定観念が時短勤務者を追い詰めていく。

「例えば、23時くらいまで長時間勤務を行っている企業では、時短で17時に仕事を切り上げる女性がいると周囲から白い目で見られてしまいます。欧米の先進国では、労働時間が短くても十分な生産性を上げている実績があるのに、高度経済成長時代に長時間労働モデルでうまくいったという成功体験がやっかいで……」

 だが、ワーママにやさしい取り組みを行う企業は増えているという。

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25.6%がマタハラ被害を受けたことがある(’13年、日本労働組合総連合会が発表)


「例えば、IKEAは時短勤務者が6割でも、育休の人の作業分をみんなでシェアしながらうまく仕事を回しています。また、サイボウズでは男性社長自らが育休と時短勤務を行うなど、男性・女性に関係なく優秀な人材を呼び込むために、働ける環境整備を経営戦略に位置づけています」

 一部の企業ではマタハラ防止研修を希望するところが出てくるなど、変化が見られるようになってきた。

「企業としても意欲のある女性社員に気持ちよく働いてもらったほうが業績も上がるわけですから。日本の女性の就業率が男性並みになれば、GDPが15%上がるという声もあるくらいです。マタハラを解消すれば、日本経済にとっても大きなプラスとなり、明るい未来が見えてきます!」

 社会を変えたスーパーウーマンが、ワーママにやさしい職場に変えてくれることを願う。