メーカーのバイヤー時代に200社以上を担当した実績を持ち、コスト削減や仕入れの専門家として活躍中の経済評論家・坂口孝則さん。情報番組『スッキリ!!』(日本テレビ系)のコメンテーターとしてもおなじみです。

 坂口さんによると、欲しい商品をできるだけ安く手に入れる方法があるそう。

「実は、商品の価格の統計をとってみると、商品ごとに安くなる時期があるのがわかります。こういった底値になる時期を頭に入れておくと、高い時期に商品を買ってしまうことを避けられます」

 というわけで3回に分けて、家電のほか、家具や自動車、食料品、衣料などの底値が狙える時期について教えてもらいました。最終回はアパレルや酒類などの業界のからくりをご紹介します。

【アパレル】夏のセールはお買い得、冬は要注意

 アパレル業界ではコートやセーターなどの重衣料の売り上げが利益の大半を占めています。冬物をいかにして売るかがポイントなので、セールでは、夏物は本当に安くなっていてお買い得ですが、冬物はさほど安くならない商品も多いのが特徴です。それでも、12月、1月はセールで価格が下がるので、11月に買うよりはお得です。また、アウトレットで安いものは、間違いなくお買い得なのでおすすめです。その商品が本当に安くなっているかどうかは、価格自体よりも価格が書いてある文字の大きさでわかるという店員さんの話もあります。大きな文字で書かれている価格は、本当にお買い得な目玉商品の場合が多いそうです。

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【男性用スーツ】夏用も冬用も8月、9月が安い

 男性用の夏のスーツは、これから出番が少なくなる8月、9月に安くなります。一方、冬用のスーツもまだ着るには早い8月、9月に安くなるので、夏用も冬用もスーツは8月、9月に買うとお得です。ワイシャツも同様で、8月、9月が底値になります。靴下は価格に傾向はないですが、「3足1000円」といったふれこみに釣られないようにしましょう。お得に見えても、もともと3足で1000円以下の商品である可能性もあります。また、安そうだからと好みではないけど買ってしまうという人も多いので、冷静に判断してください。

【酒類】ビールは汗かきシーズンと宴会シーズンに下がる

 ビールの価格は意外と良心的。世間一般で需要が高まる暑い時期と、歓送迎会や忘年会、新年会などが続く宴会シーズンに下がります。一方、発泡酒や新ジャンルは花見が終わった4月、5月に下がるのが特徴。店が仕入れた在庫品を販売するため安くなるのです。ビールも発泡酒・新ジャンルも、季節によってさまざまなフレーバーや機能を持った新商品が出るもの。少し待つと安くなるので、それを待っていろんな商品を試すのも楽しいかもしれません。

【カレールー】秋口はカレーが安いからまとめ買いも

 秋になると、スーパーではカレールーが安くなります。ただし、これにはちょっと落とし穴が。食欲の秋に、肉や野菜をたくさん売りたいのがスーパーのねらい。そこで、カレールーを買ってもらえれば、食材も一緒に買ってもらえるので、カレールーを安くして、お客をひきつけているのです。肉や野菜が安くなければ、カレールーが安くてもトータルではお得感はなくなるので、注意しましょう。ちなみにスーパーには1:7:2の法則があります。商品の1割は目玉商品でほかのスーパーと比べてもかなり安い。7割はほかと価格に大差はありません。2割はほかよりも高い商品。お客は1割の目玉商品だけでなく、7割、2割を占める普通、またはそれ以上の価格の商品を買ってしまうので、スーパーは安売りしても利益が出るのです。

【カラオケルーム】年末はクーポン券が出ないので高くなる

 カラオケルームの料金は月によって変わるわけではありませんが、12月だけグンと高くなります。その理由はクーポンの存在です。カラオケルームは、クリスマスや忘年会で利用者が増える年末の繁忙期には、料金が安くなるクーポンを出しません。そのため、この時期に利用すると料金が高くなるのです。また、年末年始料金を打ち出すお店もあり、12月はカラオケルームを安く利用するのは難しいでしょう。

■目利き講座1:アボカドでスーパーの価格レベルがわかる

 スーパーの商品価格が全体的に高いのか、安いのかは、アボカドの価格を見ればわかります。昔は卵や白砂糖の価格が目安でしたが、今はアボカドでもわかります。アボカドは輸入物がほとんどで、価格変動が激しいのが特徴。アボカドの価格が安いスーパーは、卸業者と価格交渉ができているということなので、価格変動が激しい商品でも交渉ができるのだから、ほかの商品もしっかり交渉できていて、全般的に安い商品が多いのです。

■目利き講座2:コンビニで買う商品は気温差に左右される

 コンビニでは8月からおでんが発売されていて、不思議に思っている人も多いのでは? 実はコンビニのおでんは暑いから売れない、寒いから売れるのではありません。どんなに暑い日でも、前日から気温が大きく下がると、急に寒くなったように感じて、温かいものが食べたくなり、おでんが売れるのです。2月にアイスが売れるのは逆の理由で、急に気温が高くなると冷たいものが食べたくなるから。気温ではなく、気温差に左右されるのがコンビニ商品なのです。

(ライター/紀和静 イラスト/ちんぱん)

〈プロフィール〉

坂口孝則(さかぐち・たかのり)●大阪大学経済学部卒業後、電機メーカー、自動車メーカーで調達・購買業務に従事。現在は未来調達研究所株式会社取締役。調達・購買業務コンサルタント、研修講師、講演家。「ほんとうの調達・購買・資材理論」主宰。著書は26冊に及び、テレビ番組でも活躍。