「会社に内緒で夜のアルバイトをしているんだけれど、マイナンバー制度が始まったらどうすればいいの?」

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 東京・渋谷区内のスナックで働くミサさん(35=仮名)の昼間の顔はOLだ。週2~3日、スナックでバイトして月平均20万~30万円は稼いでいる。バイト代は源泉徴収されたうえで支給されている。

 会社の就業規則は副業を認めていない。来年1月の制度運用開始で、副業が会社にバレてしまうのではないかと心配している。

 税理士法人「レガート」(東京都中央区)の代表で、税理士の服部誠さんは、

「会社は従業員の住んでいる市区町村に給与支払いの報告義務がある。それを元に住民税が計算されるが、ほかの家族の収入も市区町村に通知されるため、会社の年末調整が間違っていると、市区町村から会社の所轄税務署へ通報される。副業があった場合、結果として住民税の通知書から会社に知られることがある」

 と話す。

 副業の把握は、制度運用前の現在も行われている。運用後は、給与支払いの報告にはマイナンバーが記載されるため、仕組みが強化される。副業禁止かどうかは別として、内緒のバイトを会社に知られたくない場合もあるだろう。何か方法はないのか。

「副業と合わせて確定申告するときがポイント。住民税は特別徴収をしている会社がほとんどだが、副業に関連する住民税は普通徴収を選択する。そうすれば、会社は気づかないかも」(服部さん)

 特別徴収とは、会社が住民税の年税額の12分の1を毎月給料から天引きして、市区町村へ納付する方法だ。一方、普通徴収は、年4回の納期に分けて、自分自身で市区町村に納付する。

 新宿区内の個人経営の小さな居酒屋でバイトしているアケミさん(20代=仮名)は、手渡しで1日の給料をもらっている。これまでに給与明細はもらったことがない。

 零細企業や個人経営の店舗などの場合、まだマイナンバーの認知度は高くない。ようやく制度を学ぼうとする経営者もいるという。制度導入でどのような影響があるのか。

「小さな店舗や個人事業の場合、従業員に支払っている給与の報告を市区町村にしていない場合もあるだろう。その場合は、副業しているかどうかさえ、市区町村や会社は把握しようがない」(服部さん)

 ブログやメールマガジンで小銭を稼ぐ主婦のカスミさん(40=仮名)は、収入が多い月では10数万円になることもある。運営元などから支払い明細は送られてこず、確定申告の経験はない。このような原稿料などは報酬扱いとなる。原則として確定申告する必要がある。

「本人に支払い明細が届いているかどうかは別として、報酬の場合には支払い元の会社が本人の住所地の税務署に支払い調書を出している場合が多い。その場合、支払い明細がなくても、税務署はその事実を把握している。マイナンバーの導入で、さらに把握しやすくなる」(服部さん)

 給与の支払いには必ずマイナンバーが記載されることになる。それは副業先も同じ。偽名で働くわけにはいかないから家族にバレやすくなる。会社や家族に内緒……というのは難しくなりそうだ。


<ジャーナリスト渋井哲也>