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 多くの犠牲を払い、身を粉にして両親や義父母などを看続けても、貢献度に見合った財産分与が行われることはまれ。介護を手伝わなかったきょうだい・親戚とモメにモメた結果、介護者が涙をのむケースが多いという。なぜか? どうしたらトラブルを防げるのだろうか?

 トラブルを防ぐためには、トラブルの芽を事前に摘み取っておくこと。その際、効果を発揮するものとして専門家がそろってすすめるのは、生前の話し合いと遺言書の作成だ。

 不動産鑑定士であるフジ総合グループの藤宮浩代表に聞いてみた。

「生前の早い段階から家族会議を進めるコツとして、まずは近い将来の話から切り出してみることです。理想は会議の中で、親側が、どう看てほしいのか希望を伝えることです。

 それぞれの子どもの家庭、仕事状況なども加味しつつ、費用の出どころ、誰にいつどんな世話をしてほしいか、施設に入る気はあるのか、などだんだん具体的な話を。誰かが仕事を辞めなければいけないなど割を食うなら手厚い準備を施しましょう」

 まず数か月、数年先のビジョンから決め、ゆくゆくは相続を見通した話し合いをすることを念頭に置く。

 介護・福祉系法律事務所『おかげさま』代表の外岡潤弁護士は4つのポイントを挙げる。

「1、現時点での相続人、財産リストの作成。2、不動産は誰が継ぐのか。3、相続税はどう分担するのか。4、葬儀とお墓はどうするのか、介護資金はどこからまかなうのか。遺産分配の話し合いの際には、“介護に貢献してきた人にいかに報いるか”という視点で公平を図りましょう」

 話し合いの席に弁護士など法律知識のある「親族会議アドバイザー」を雇うことも話をスムーズに進めるために有効と、外岡弁護士は指摘する。

 話し合いの結果や、被介護者の遺志を明確にし、死後のトラブルを回避する有効な手立てになるのが、遺言書だ。

 フジ総合グループ内、フジ相続税理士法人の髙原誠代表社員は、手書きの「自筆証書遺言」よりも、「公正証書遺言」をすすめる。

「作成に費用はかかるものの、専門家が作るため書き間違いなどで無効となる心配がなく、紛失や偽装の心配もありません。大きな駅の近くにある公証役場に行けば作成してもらえ、外出が困難な場合は出張依頼もできます。

 “付言事項”といって、家族らへ言葉を遺せる欄もあります。遺言は残された家族へのメッセージ。きちんと遺すことでいらぬ争いを防げたり、介護者への感謝を示せる絶好の機会です」

 髙原代表社員は続ける。

「どれだけ“きょうだい仲よく”と言い聞かせ育ててきたつもりでも、最後にこじれたら意味がありません。子どもが相続でモメないことはないという前提で、最後にもうひと気遣いしましょう。相続は親の最後の腕の見せどころ」

 一方で、介護者側にも積極的な努力が必要、と公認会計士で合同会社アールパートナーズのの平林代表は指摘した。

「まずは早くから被介護者や周囲との距離を縮めて何でも言い合える関係を築いておくのがいちばん。そのうえで介護を全面的に引き受けるのであれば、“このくらいやるからこの額(や品物)はよろしくね”くらいは主張しましょう。

 また、介護をしない周囲を甘やかさずに、介護の真っ最中に“口を出すなら、もしくは金銭の援助などをしてくれないのなら、私ももう放り出すからあなたがやってみなさいよ”と少しでも経験してもらうのも手でしょう。たとえ1週間でも、介護を経験すれば大変さはわかるはず。“きっと誰かがわかってくれる”では泣きを見ます」