大ヒット映画『アナと雪の女王』。エルサ役として主題歌『Let It Go ~ありのままで~』を歌う松たか子が国内外で高く評価されているが、ツイッターなどでは妹のアナを演じる沙也加への称賛が尽きなかったのは記憶に新しい。来日した映画監督も彼女の生歌を聴いて涙したほどだ。

「この作品は“ドラマチックミュージカル”。特に沙也加さんは複数人で歌うものも含めて『生まれてはじめて』『とびら開けて』『雪だるまつくろう』と楽曲数が多いんです。だけどそれぞれのテーマをちゃんとくみ、歌い方を変えたりして見事に表現しているんですよ。アナには“真実の愛”、エルサには“自己の解放”という、2つのテーマが描かれています」(映画ライター)

 実はこの2つのテーマ、沙也加自身にとっても大きなキーワードなのだ。その過去をひも解くと、彼女の変化、そして人々を感動させる“理由”が見えてくる―。

 “SAYAKA”としてデビューしたのは2002 年。デビュー曲はオリコン5位を記録し、ドラマや映画にも出演するなど順風満帆に映ったが、

「親の七光という感じがぬぐえず、歌い方も聖子さんをマネた感じで、声もかぼそかったです。本人の印象もどこかつっぱっている感じでしたよ」(芸能プロ関係者)

 実際、彼女も雑誌の取材で、《いろんなことを人のせいにして、自分にはやる気がないように見せていたんですよね》と回想するほど。しかし、芸能界入りは自らの決断によるものだった。

 歌手としての夢を抱かせてくれた母。だが、それは同時に、本人いわく“厚い壁”として立ちはだかる。

《声も似ているでしょう。母が歌っているから、私は歌わないほうがいいのかなと考えたことも、正直言ってありました》

 偉大な母を持つつらさをインタビューなどで漏らしていた。そんな沙也加に転機が。ミュージカルとの出会いだ。

「宮本亜門さん演出の舞台で、初めてオーディションを受けたそうです。両親の存在と離れた場所にチャレンジすることで、自分だけを見てもらえると思ったんだとか」(舞台スタッフ)

 オーディションでは宮本から少しだけ演出をつけられ、歌を披露。そこでこんな指示をされたという。

「“もっともっと自分を解放してくださーい”と。その言葉につられるように、どんどん自分を出せたんだとか。今でもあのときの心地よさを忘れられないそうです」(前出・舞台スタッフ)

《舞台の上で、自分がどれだけ無力かを思い知ったんです。悔しくて、うまくなりたくて、もう、一生懸命練習しました。そうしたら、自分の殻が、パン!って割れた。自分が純粋に『これが好きだ!』っていう思いがあれば、それだけでいいんだって気づいたんです》