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 4月30日、悔しさを滲ませながら末期の大腸がんを公表した今井雅之さん。その日からわずか28日で帰らぬ人となってしまった。

「CTスキャンをしたら大きい腫瘍が2つ、3つありました。かなり痛みもあるし、ほとんど歩けなくなって、声も出なくなった。本当にこんなことになってしまいましたけど、僕は精いっぱい、この仕事を命がけで、やっていきますので、どうか応援よろしくお願いします」

 復帰を諦めない強い意志を見せたのだが、その願いは叶わなかった。

「実はこの日の会見も、報道陣が待つ部屋の前まで車イスに乗ってきたんです。歩くことすら厳しい状況でした。まさに“気力で乗り切った会見”といっても過言ではないでしょう」(スポーツ紙記者)

 自衛隊出身という異色な経歴の持ち主だったが、彼のライフワークともいえる舞台『THE WINDS OF GOD』は、そこでの経験から生まれたもの。

「初めは“神風”という響きにカッコいいものなんだと思っていたそうなんです。でも本を読んだり人に話を聞いたりするうちに、その考え方が覆された。“自分の思っていたものと違う”と気づいて、これを多くの人々に伝えなくてはと思ったんです。脚本を作るにあたっては、延べ100人の元特攻隊員たちに話を聞いたとか」(舞台関係者)

 同作は、舞台化だけでなく’06 年に映画化もされている。このときは全編英語での撮影に挑戦した。

「いろいろな人に“なぜ、日本人なのに英語でやるんだ? 日本語でやって英語の字幕を入れればいいじゃないか”と反対されていました。でも彼は“日本語は世界でマイナーな言語だし、何よりハリウッドは英語じゃないか。しかも、字幕字幕というけれど世界に目を向ければ字が読めない人だって多い。だから世界で戦ううえでの言語は英語じゃないといけないんだ。あとは神風特攻隊のことを、現地の人は勘違いをしているから、しっかり真実を伝える意味でも現地語で伝えないといけない”とも言っていました」(映画製作会社関係者)

 この作品に賭ける意気込みは並々ならぬものがあったのだ。太平洋戦争が終結して70年になる今年の公演には特別な思いがあり、何としても成功させたいと熱望していた。

「本当に自分が舞台に立ちたかったんでしょう。座っているだけでもツラいはずなのに、毎日リハーサルに来て稽古を見ていました。時折、顔をゆがめて“ウゥゥゥ”と唸っているときもありました。それは痛みをこらえきれずにということではなく“なぜ自分がそこにいないのか”という苛立ちからだったのではないでしょうか。這ってでも舞台に出たいと思っていたはずです」(前出・舞台関係者)