“彼女のなだらかなキュウリョウをうっとりと眺めた”“きみのエキスをチュウシュツして飲み干したい”といった、セクハラまがいな表現が問題となり、発売停止となった漢字問題集『生きるセンター漢字・小説語句』(駿台文庫)。こうした類いの受験参考書が蔓延るのは何故なのか。その背景には、日本の教育システムが抱える重大な問題点があるのだとフィフィは指摘する。

日本の受験勉強は暗記中心

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 今回の問題集に限らず、受験関連書籍のなかには、下ネタや萌えを売りにしているものがありますよね。あるいは、語呂合わせや歌に乗せて、年号や元素記号などを覚えた方も多いのではないでしょうか。実際、私の姉も学生のとき、歌いながら歴史を覚えていましたよ。

 こうしたことからもわかるように、日本の受験勉強は暗記中心になっているんですよね。

 どれだけ暗記できたかが合否に大きく作用してくるわけ。だから語呂合わせや歌、ゲーム感覚やクイズ感覚で楽しく暗記しましょうという発想や、今回のような問題集が出てきたりするんです。

 もちろん、暗記をすることも重要です。何も知らないのでは話になりません。だけど、ただやみくもに暗記をしているだけでは探究心は育たないし、学問の面白さに気付くこともないですよね。

重要なのは、厚切りジェイソンの視点

 勉強の楽しさを教えるのに、下ネタだの萌えだのと、あれこれ手を尽くし、子どもに媚びる必要はないんです。

 教育の現場でもそう。ヒップホップが流行っているという安直な理由で、体育の必須科目のダンスのなかにもヒップホップがとり入れられたの。そうすれば子どもたちが興味をもって授業に参加するのではないかという、子どもに媚びた教育姿勢が見受けられます。

 だけど本来、勉強や教育というのは、国民の義務なんです。好き嫌いに関係なくやるべきことなんです。

 うちの息子は厚切りジェイソンが大好きなんだけど、彼のネタに日本の漢字の不思議さを題材にしたものがあります。たとえば“親切”という言葉をネタにして、“なんで親を切るの〜?? それは親切じゃない”と言ってみたり、“必死”という言葉をネタにして、“必ず死ぬから頑張りたくない〜”と言ってみたり。

 金八先生なんかもそうですけど、そこには何故この字を使うんだろうという探究心が働いていますよね。本来、教育とは、こうした探究心を重要視し、育てるものでなくてはならないはずです。

国際社会で通用する人材を育てるためには?

 海外の大学の授業では、先生の話を聞いて、自分の言葉で応えるディベート形式を多く取り入れています。覚えたことを発表しているだけではダメ。これは社会に出てからも同じ。暗記をして、知識を溜め込んでいるだけでは通用しません。

 まして国際社会で活躍できる人材を育てようとするならば、日本の学習を丸暗記中心から、発想力を育てるスタイルに変えるべきだと思います。そのためには、例えば暗記が得意な学生が評価されるような試験方法から見直す必要があるかもしれません。ちょうどこれからセンター試験が廃止されるなどの改革が行われますが、新制度の取り組みで教育のあり方が大きく変わることを願います。

 最後に『ここがヘンだよ日本人』などに出演していたケビン・クローンさんが、最近自身のブログで的確な表現をしていたので、少し紹介しておきます。何故日本のGDPは上がらないのか、その理由を彼は次のように表現していました。

《日本人の既得権益メンタリティーはお母ちゃん『今だけ頑張りなさい!あとから楽だから』の一言によって形成される。ゆとりに限らず日本の学生が世界的におバカさんなのは母ちゃんと、既得権益商売しか目指さない日本の企業体質にありますね((((^_^;)》

 "良い大学に入って、良い企業に入れれば人生安泰"という世界観。まず、この視点を変えないことには、世界はもちろん、ここ日本でも、多様化する社会に対応できる人材を育てていくのは難しいのではないでしょうか。

《構成・文/岸沙織》