■母になったからこそ親の目線で書けた

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『偏差値29からなぜ東大に合格できたのか』780円/幻冬舎
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 思春期のころにうつ病を患っていた杉山さんは、少しでも同じ病気で悩む人の助けになればと心理学の勉強を重ね、心理カウンセラーの資格を取得。本書の中で、自らの経験に照らしあわせた心理的なテクニックを多数、紹介している。

「心理学の勉強を通して、私がなぜチャレンジ精神を持つことができたのか、論理的に理解することができたんです。例えば、“あなたはこういう人間なのね”と言うことで、相手が本当にそのとおりの人間になってしまう現象を“ラベリング効果”といいます。私が東大合格を信じて頑張れたのは、母に“なっちゃんは、やればできるよ”“こんなことができるなんて、すごいね”と言われて育ったから。親御さんが心理的なテクニックをうまく使えるようになれば、時間がかかったとしても結果的に子どもの能力を大きく伸ばすことができると思うんです」

 ただし、子どもへの言葉のかけ方には若干の注意が必要だという。

「“頭がよくてすごいね”など、能力を褒めるのは避けたほうがいいですね。能力を褒められて育つと、たまたまテストで悪い点をとっただけで“自分には能力がない”とアイデンティティーが崩れてしまい、挫折しやすくなってしまうんです。“頑張って勉強して偉いね”など、能力ではなく努力を褒めてあげてほしいですね」

 杉山さんは現在、1歳2か月の男の子の母親でもある。これまでも東大合格に関する本を出版しているが、出産をへて自らの視点の据え方が変わったという。

「東大合格に関してもそれ以外のことでも、以前は子どもの目線からしか物事を見ることができなかったのですが、息子が生まれてからは親の視点も持てるようになりました。子育ては東大受験よりもずっと大変で、“どうして言うことをきいてくれないんだろう”と思うことがしょっちゅうあり、親がどんな気持ちで私を育ててくれたのかわかるようになりました。親が私を信じて可能性を広げてくれたように、私も息子を信じ、たくさんの可能性を与えてあげたいと思っています。この本は息子の将来のことを考えつつ書いた本でもあるんです」

 本書には、人生の目標達成にも役立つノウハウも紹介されている。

「例えば、受験生のとき、アナログ時計の針を12時に合わせて、勉強した時間を視覚でとらえる“自分時計”というものを使っていたのですが、これは今でも活用しています。時間は無限にあるように見えて実は有限ですから。時間を効率的に使うことは、目標を達成するためにとても大切なことだと思っています」

 最後にあらためて優秀な子どもに育てるコツを尋ねてみたところ、こんな答えが返ってきた。

「子どもがいちばん認めてもらいたいのは、親御さんだと思うんです。たとえ失敗したとしても、努力や行動をしっかり認めてあげること。その積み重ねが大きな成功体験につながっていくのだと私は信じています」

■取材後記/著者の素顔

 10代のころから『少年ジャンプ』を愛読している無類のマンガ好きの杉山さん。将来、息子さんに読ませたいマンガのひとつが『SLAM DUNK』(スラムダンク)なのだそう。「仲間と一緒に頑張ることで勝利をつかむお話なので、教育本としてもアリだと思うんです。主人公が地道な努力を重ねて才能を開花させていく点もポイントが高いですし。早く息子とマンガの話をしたいです(笑い)」

(取材・文/熊谷あづさ 撮影/齋藤周造)

〈著者プロフィール〉

すぎやま・なつこ。●静岡県生まれ。東京大学薬学部卒業。作家、イラストレーター。心理カウンセラー。大学卒業後は東大合格やうつ病などのテーマで執筆活動や講演活動を行っている。著書に『鬱姫なっちゃんの闘鬱記』『「うつ」と上手につきあう本』『偏差値29からの東大合格』『偏差値29の私が東大に合格した超独学勉強法』などがある。