「九州で火山が連続的に噴火している原因ははっきりしています。南のフィリピン海プレート(岩板)が西日本を押す圧力が高まり、地底のマグマが圧縮されて噴き出したんです。ただし、噴煙が1万メートルを超える大噴火にはなりません。たまっているマグマを吐き出したらおしまい。マグマだまりに新たなマグマが供給されていないからです」

 立命館大学・歴史都市防災研究所の高橋学教授はきっぱり言い切った。

「それよりも……」と続け、東日本の火山の名前を挙げ始めたのである。

 高橋教授は本誌6月16日号で「九州は連発噴火する」と予測。同号は鹿児島・口永良部島の噴火を受けて取材した内容を報じたが、実は噴火の約3週間前、高橋教授に「箱根山の火山性地震について記事にしたい」と取材依頼していた。

 高橋教授は、「東京に近いから騒がれているけれど、箱根山はいますぐ大噴火することはありません。それよりも九州が危ないんです。大噴火の可能性があるので、それを報じるほうが意味があると思いますよ」と逆提案してきた。同教授は昨年の御嶽山噴火も予測している。しかし、他のニュースとの兼ね合いもあり、そのときは記事にできなかった。

 すると、5月29日、高橋教授が名指ししていた口永良部島(くちのえらぶじま)が爆発的大噴火。全島避難の大災害となったのだ。

 その後も、7月30日に鹿児島県トカラ列島の諏訪之瀬島で噴煙1000メートルの噴火があったほか、8月15日、鹿児島県鹿児島市の桜島では気象庁が1000回を超える火山性地震を観測し、警戒レベルを「避難準備」に引き上げ、同市は噴石や火砕流が居住地域を襲うおそれがあるとして51世帯77人に避難勧告を出した。そして9月14日、観光地として人気の熊本・阿蘇山が噴火した。

 九州連発噴火予測はまたも的中した。

■M8.5以上の地震は必ず火山大爆発とセット

 冒頭の「それよりも……」という高橋教授の指摘に戻る。

「西日本にある火山の現況とは異なり、東日本の火山はマグマがどんどんたまっています。2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)の影響です。20世紀以降、地球上でマグニチュード(M)8.5以上の大地震は11回発生しています。その中でM9.0の東日本大震災だけがまだ地震のあとに噴火がない。ここ1~2年以内に東日本で爆発的な噴火が起こるおそれがあります」

 高橋教授の頭の中には“爆発する火山”がインプットされているようだ。危ない火山名をスラスラと挙げる。

「北から順に、雌阿寒岳(めあかんだけ)のちょっと東側、十勝岳、八甲田山、秋田焼山(やけやま)、栗駒山、蔵王山、吾妻山、日光白根山、草津白根山、浅間山。このうちの1か所とは限りません。’10年に南米チリで発生したM8.8のマウレ地震では、約半年後の翌’11年にプジェウエ・コルドン・カウジェ山が大噴火し、今年3月にビジャリカ山、同4月にもカルブコ山が巨大爆発しました。火山灰は太平洋から吹きつける風に乗り、国境を越えてアルゼンチンにも大きな被害をもたらしました」

 観測史上最大の地震は1960年、チリ南部のバルデビアで発生したM9.5。22時間後には日本に三陸チリ大津波を起こし、岩手・大船渡などで145人が犠牲になった。このときも2日後にはプジェウエ・コルドン・カウジェ山が爆発している。

 大地震が噴火を招くメカニズムは単純だ。地震でプレートとプレートが重なり合うポイントの状況が変わる。高橋教授によると、東日本大震災の場合、列島側の北米プレートが跳ね上がったことにより、つっかえ棒の取れた海側の太平洋プレートが沈み込む速度が増した。

「3・11前、太平洋プレートは東から西に年約10センチの速度で北米プレートの下にもぐり込んでいました。3・11後は年約30~40センチに加速しています。もぐったプレートは溶けてマグマになりますから、火山にマグマが供給され続けます。やがてマグマだまりが圧縮されて耐え切れずに噴く。M8.5以上の地震は必ず火山大爆発とセットなんです」

 では、大爆発とはどの程度の噴火を指すのか。