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 さまざまな有名人の取材を行うプロインタビュアーの吉田豪さん。

「マンガやアニメが好きだったので、昔からそっち系の古本とかを買い漁っていましたね。そこから興味分野が変わるとジャンルを変えていろんな本を読むことを繰り返して……。今はタレントの本や事件ものなどのノンフィクションばかり。小説は読まなくなりました。リアルにしか興味がなくなったんです」

 タレント本だけでも想像を絶する数を読んでいるが、昔の本のほうが読みごたえがあったと語る。

「'80年代は書籍全体のベストセラーの上位にタレントの暴露本が入っていたほどでした。目安として、消費税が導入される前くらいまでの本は、やっぱりおもしろいですね。恨み節や嫉妬などが入り交じっているんですが、カラッとしていて後を引かないんです。現代では人権を気にして暴露部分をカットしたり、全体がキレイごとでまとまってしまっている気がしますよね」

 華やかな世界にいる芸能人たちの真の姿がわかるタレント本は、吉田さんのオススメジャンルだ。

「本を読むなら、同じテーマについて1冊だけではなく、2冊以上読んでもらいたいですね。タレント本もそうです。2冊の方向から1つのテーマを読むと情報が立体的になり、矛盾が見つかったり、Aという行動の裏にBという事件が隠れているなど、たくさんの現実が見えてくるはずです」

 プロ書評家でもある吉田さんによれば、同じ人の本を2冊、比較できるものを読むと2倍楽しめるそう。

「華原朋美が活動休止前に出版した『未来を信じて』。'95年にデビューしてから5年間、トップアイドルとして君臨していた彼女が休業中に出版した本です。仕事のこと、小室哲哉との恋愛や挫折などが描かれていますが、見どころはカラーグラビア。おそらく無修正でしょう、目はうつろで疲れきった彼女の姿が、衝撃的でした」

 今年8月に集英社から『華原朋美を生きる。』を出版。薬物依存や事務所解雇などについて言及し、小室哲哉と対談しているので、比較するのにちょうどよい。

「それから『洋子へ―長門裕之の愛の落書集』。この本は不倫の話や、ほかの芸能人の悪口などが実名で掲載されて、世間を騒がせました。しかし読んでも後味の悪さはなかったんです。長門さんにお話を伺ったら“飲み屋で酔っぱらっているときの話を語り起こされた”と話していましたね。大物が酔っぱらって話す裏話なんて、おもしろいに決まっていますもん(笑い)」

 その後、老老介護となった南田洋子さんとの晩年をつづった『待ってくれ、洋子』『洋子、やっぱりいってしまったのか』の2冊では、不倫を愚行と振り返り、妻をいとおしみながら介護する姿がうかがえる。

「最後は安岡力也の息子が書いた『ホタテのお父さん』。この本を読むと息子も“安岡力也”が何者だったのかわかっていませんでした。そんな安岡力也というファンタジーを演じ抜いた力也と、入院していた彼のもとを訪ねる内田裕也との絆が記されています」