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安保法に反対する団体は、野党と意見交換会を(16日)

 新3本の矢は、①2020年ごろまでに国内総生産(GDP)600兆円、②'20年代半ばまでに出生率1・8、③'20年代初めまでに介護離職ゼロというもの。いずれも目標達成期限をずいぶん先に設定している。経済ジャーナリストの荻原博子氏は、新たな3本の矢すべての実現性に懐疑的だ。

「安倍政権になって2年半もバタバタやったのにGDPは伸びなかったわけですよね。どうやって伸ばすんですか。具体策が全くない」(荻原氏)

 '14年度の名目GDPは490兆8000万円。年3%の経済成長がなければ達成できないため、経済界から「ありえない数値だ」と疑問視する声が上がっている。あと5年で約110兆円をどう増やしていくか説明はなし。内閣府が9月に発表した今年4―6月期のGDP改定値でみると、最新名目GDPは年率換算で0・2%にすぎない。

「出生率は増えるどころか、もっと下がります。待機児童問題が解消されていないから女性が輝こうにも子どもを預けて働くことができない。それと今年4月から保育料が実質値上がりしました。子ども・子育て支援新制度の施行で年少扶養控除のみなし適用が廃止されたからです。

 保育園にたくさん子どもを預けている家庭ほど負担が増え、大阪の子だくさんの家庭では月6600円だった保育料が3万円を超えたといいます。そういう状況下で出生率が上がるのは考えにくい。言ってることと、やってる政策がアベコベなんですよ」(荻原氏)

 1人の女性が生涯に何人の子どもを産むか推計した合計特殊出生率は、厚生労働省の'14年の人口動態統計によると1・42。'05年からわずかずつ上昇していたが、9年ぶりに低下したばかりだ。

「介護離職ゼロも無理でしょう。この4月から特養ホーム入所基準が要介護度3以上と厳しくなり、“要介護度1と2の高齢者は自宅で面倒をみろ”と言われたに等しい。誰が面倒をみるんですか。共働き家庭なら、夫か妻のどちらかが仕事を辞めなきゃいけなくなるかもしれない。いま10万人が介護離職しています。状況は悪化しているのに、対策も打たずどうやってゼロにするんですか」(荻原氏)

 '13年度の特養ホーム待機者数は約53万人だった。入所基準は変わったが、何らかのケアが必要なことに変わりはない。住み慣れた地域で自立生活を─と在宅介護をすすめておいて、急転換もはなはだしい。

 強行採決による安保法成立から19日で1か月。反発の声はいまだやまず、東京・永田町の参院議員会館では16日、民主党の枝野幸男幹事長が呼びかけ人となり、維新・共産・社民・生活の各野党と『安保関連法案に反対するママの会』や学生団体『SEALDs』、学者の会などが参加して意見交換会が開かれた。今後も同会を継続していくことを確認したという。