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 さいたま市岩槻区にある施設は昨年12月16日、同市の貧困ビジネス規制条例に引っかかった。都市計画法で定められた開発許可を受けずに施設を建設し、生活保護受給者を受け入れ、保護費を不当に徴収したとされる。

 東京・新宿でホームレスをしていたときに“スカウトマン”から声をかけられた40代の入居男性が施設の内情を教えてくれた。

「生活保護申請をさせられて、保護費を受給するまでは施設内でしか使えない1日300円分のキップをもらう。受給が始まると1日500円もらえるようになる」

 保護費支給日の朝、施設から集団でマイクロバスに乗る。約30人単位で区役所の窓口へ。受給するとすぐ、同行している施設職員に外で封筒ごと保護費を渡す。個人差はあるが月約12万~13万円だ。

「明細書が入っているので1円もくすねることはできない。毎月9万8000円の寮費と小遣い分を差し引いた残額1万~2万円が翌日、渡される。その日はみんな徒歩15分のコンビニに行って、缶ビールを買って、店の前でダベって飲む。パチンコする人もいる。500円の小遣いでパチンコすると、1分ももたずに終わっちゃうから」(同)

 施設では朝、夕に食事が出る。メニューは、ごはんとみそ汁、漬物、納豆ぐらい。ごはんはおかわり自由。夕食には肉野菜炒めなどがつく。

「調理経験のなさそうな入居者が作っているので、おいしいとは言えないかな。土曜日は決まってカレー。丼物はおかわりできません。クリスマスには小さなケーキとチキン、それに缶ビールが1本ついた(笑い)」(同)

 風呂は週3回。1人30分の時間制限がある。テレビを見るか、寝る以外はやることがない。飼い猫が迷い込んでくると、みんなで可愛がる。

「情けないけど自立生活を考えている人はほとんどいない。もっといい施設があると思う。でも、みんな思考停止しているというか、考えたくないんだ。殴られたり怒られたりはしないから、“飼い殺し”だよ。

 隣の部屋とは薄い壁一枚なので、性処理も思う存分はできないしね。唯一のレジャーは散歩。やることがないので、みんなよく歩くんだ。どこのコンビニがいちばん近いかとか、ストップウオッチで計ったりして」(同)

 生活困窮者の支援に取り組むNPO法人『ほっと・ポット』の代表理事で社会福祉士の宮澤進さんは、こう憤る。

「提供サービスと徴収金額は明らかに見合わない。この宗教法人は同区内でほかに4つの施設を運営しており、同じように入居者から金をむしり取っている。市は条例に基づき業務停止命令を出すべきだ」

 市生活福祉課はこう話す。

「業務停止命令を出すと、入居者の住居を奪うことになる。入居制限して転居支援を進めるしかないが、施設に出戻りの入居者もいるほどなので」

 運営元の寺を訪ねた。駐車場で作業していた丸刈りの体格のいい男性は「寺の関係者なんていない」などとドスのきいた声で短く答えた。

 厚生労働省が6日に発表した最新データによると、全国の生活保護受給者は216万6019人で年々増加中。自立支援に使われるはずの私たちの税金はどこに消えたのか。

取材・文/フリーライター山嵜信明と週刊女性取材班