【脚色(あしいろ)】

「『週刊大衆』の競馬記事に《ゴール前は勝ち馬と脚色が同じになってしまったのも気がかり》とあり、気になって採集しました。脚色とは、馬の走りっぷりのことらしい。これはおもしろい! と思いましたが、不採用。編集会議で“細かすぎる。競馬辞典じゃないんだから”と指摘を受けました(笑い)。競馬好きの人が一般人に説明するとき“アノ馬は脚色がよくてね、つまり、走りっぷりがよくてね”と必ず説明してくれる。ならば、辞書に載せなくても大丈夫だろうと……」

 運動会の駆けっこで、親が口々に「アノ子の脚色いいね~」なんて言い出せば辞書に脚色が採用されるのも夢じゃないかも!?

【手タレ(て・たれ)】

「2009年、『週刊文春』の連載コミックエッセー『人生モグラたたき!』(池田暁子)の挿絵の中に小さく書いてあった《世の中には「白魚のような手」の人もいますが、「手タレ」さんとか》を採集しました。これは、“手だけのタレント(パーツモデル)”のこと。昔から使われていますが、手タレを採用するなら、脚タレ、耳タレも入れなきゃならない。しかし、それらの類似語はまだ目立って使われていません。2~3年後に手タレブームが起こり、手タレをしている女性が主人公のドラマや漫画が大ヒットして“将来の夢は手タレです”という人が出てくれば、掲載の可能性もあります」

【タヒる(たひる)】

「2011年、『日本美容教育センター』に文章を寄稿したときに挿絵イラストを描いてくださった人が《風邪、長引いてー、まじ、タヒルー》と書いていて、採集しました」

 挿絵内の文字にまで注目しているの!? と驚いてしまうが、「いや、パッとイラストに書くほど、すぐに思いつく俗語だったわけですよね。しかし5年たった今は、そこまで使われていないかもしれません。もう少し様子をみるつもりです」

【V振り(ぶい・ふり)】

「テレビ番組などでスタジオにいるレポーターが、“私が現地で取材しました。それではVTRをご覧ください!”と紹介することを、“V振り”といいます。これは業界用語ですが、バラエティー番組の放送中に何の説明もなく「V振りお願いします」と言うタレントさんがいたので、採集。業界用語がたまたま放送された可能性もありますが、最初は仲間内の言葉でも、全国放送で普通に使うようになれば、一般に広まっているという見方ができる」

【ステショ】

「雑誌『セブンティーン』に〈ステショもインテリアものも、充実しまくり〉と書いてあり、採集。別の雑誌でも同じ言葉を見かけました。これはステーショナリー(文房具)の略語。ただ、日常会話ではあまり使われない雑誌特有の“方言”かもしれません」

 特定の雑誌が使っているだけで、たいして流行らずに終わる言葉も多く、扱いが難しいとか。

「雑誌『25ansヴァンサンカン』が積極的に使っていた、“エレガントな”を意味する『エレな』も過去に採集しましたが、こちらも認知度が低く、不採用。

 ちなみに省略語は、『メルアド』など4音が主流でしたが、少し前から『メアド』などの3音ブームに変わりました。今、注目しているのは、『ノミホ』(飲み放題)。それから『カロメ』(カロリーメイト)ですね」

【キョロ充(キョロじゅう)】

「これは、もうすでに辞書に掲載された『リア充(実生活が充実していること)』の派生語。毎日新聞に、《大学の入学シーズンに、友達ができず、きょろきょろと知り合いを探す人をキョロ充と呼ぶ》という主旨の文がありました。最新版の辞書を出した2014年1月以降に採集したものなので、数年後に定着してるかどうか、楽しみです」