行政は、彼らを救うための手を差しのべているのか。

 川崎市教育委員会は、事件の検証と対策を昨年5月に終え、市のホームページに『中学生死亡事件に係る教育委員会事務局検証委員会 報告書』(A429枚)を掲載した。

 学校側の取り組みの不備が事件を誘発した一因になったことを率直に認め、昨春、「ダイヤルSOS」と「24時間子供SOS電話相談」を立ち上げ、子どもらの声を吸い上げる体制を敷いた。

「『ダイヤル~』には昨年12月までに26件の相談が寄せられました。不登校、いじめ、先生のこと、悩みなどです。『24時間~』に連絡をしやすくするため、QRコードつきのカードを配ったところ、4月から10月までに28件だった相談が、11月~12月には一気に57件に増えました」(市教委の教育指導課)

 そう成果に胸を張るが、取材で話を聞いた市民にはあまり知られていなかった。

 上村くんが通っていた中学校では、最寄り駅周辺で教諭が見守りを実施しているという。だが、「夜7時ぐらいまで」と生徒。連日、深夜近くまで街に中高生の姿があることを考えると、切り上げ時間はだいぶ早い。子どもらの反応も冷ややかだ。

「正直、なんも変わってない。パトロールが増えた実感もないし。事件も“かわいそうね”で終わって、10年もしたら忘れちゃうんだろうな」(少年Aの同級生女子)

 不良がたむろする公園近くの飲食店経営者は、こう答えた。

「去年の夏、公園に防犯カメラが設置されたと聞いたけどほかには年末パトロールをしていたのを見たくらいかな」

取材/山嵜信明と週刊女性取材班