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 観光庁の『訪日外国人消費動向調査』を見ると、昨年10~12月の費目別購入率は中国人の場合、菓子類は67%、化粧品等は76%、医薬品等は72%の購入率。一方、米国人は、菓子類41%、化粧品等9.5%、医薬品等13%である。いかに中国人が突出して日用品を購入しているかがわかる。

 一昨年、中国のネットメディアで拡散された“日本に行ったら買わなければならない12の神薬(熱さまシート、イブクイック、サロンパスなど)”の人気も衰えてはいない。 それには理由がある、と中国事情や“爆買い”に詳しいジャーナリストの中島恵さんは話す。

「中国には総合病院はあるけど、日本のような町のクリニックがまったくない。そのため、病院はいつでも混んでいて何時間も待たされる。だから風邪くらいで病院には行きません。漢方薬はありますが、とても高い。 それに比べて日本の薬は安いし、効き目もある。そして安全です。液体絆創膏など手の込んだものが多いのも魅力なのでしょう」

 旅行スタイルにも変化の兆しが見えるという。

「団体ツアーではなく、家族や友人同士での個人旅行が明らかに増えていますね。北海道は特に顕著。年齢も若くなっていて、世界最大の旅行サイト『トリップ・アドバイザー』などを利用して、ホテルやさまざまな体験ツアーを自分で予約するようになっています」(一般社団法人『ジャパンショッピングツーリズム協会』事業推進部の佐藤暢威さん)

 さらに、旅の目的も買い物や観光だけではなくなっているとか。

「富裕層は、口コミで知った日本の美容室やエステ、マッサージや鍼灸を受けることも多い。そのほか、中国の医療事情から、日本で人間ドックや検診をする人たちもいます」(中島さん)

 それにしても、驚くのは日本製品に関する知識の豊富さである。いったい彼らは日本の情報をいかにして得ているのだろうか。

「中国人は、オフィシャルの情報を信用しないんです。信じるのは、同胞のネットワーク。月間ユーザーが5億人を超えた『微信』などのSNSを使って友達のネットワーク情報、好きな芸能人のオススメをチェックし、買いたい商品を決めます」(佐藤さん)

 さらに、『朋友圏』というネット上の口コミサークルも情報源のひとつ。一般的に中国人は、家族や親戚、会社の同僚、同級生、地元の幼なじみなど、複数のサークルに入り、その情報が買い物にも利用される。

「中国人のほとんどはスマホを片手に買い物をします。ここ2年くらいで飛躍的に広まったスマホの影響でガイドブックを読む人はほとんどいない」(中島さん)

 ところが同じ中国圏でも、情報収集には違いがあるらしい。

「おもしろいのは、中国では口コミなのに、台湾は、オーソドックスな旅のサイトをチェックして来ること。一方、香港はまだ紙媒体が効果的なんです。

 分厚いガイドブックもあるし、旅行週刊誌では日本の特集をやっていて、東京の下町“砂町銀座特集”などを掲載したレアな号でもすぐ完売になったりする。なにしろ日本に来る香港人は、年間150万人ですが、5人に1人は10回以上のリピーター。30万人の“日本マニア”がいるんです」