世の中にはさまざまな人がいるが、すぐ不機嫌になる人は厄介。面倒なのが、彼らが不機嫌になっている理由がわからないこと。こちらは悪いことをした覚えなどないのに、なぜか、怒っていて理不尽な態度をとったり、不愉快な言葉をぶつけてくるのでとても困る。

 そんな、不機嫌な人・攻撃的になった人と一緒にいる際、相手の心理を読み取る方法を専門家に聞いた。

怒らせようと仕掛けてくる

「相手が不機嫌になるということは、心理ゲームを仕掛けている状態ともいえます」

 こう話すのは、LGBTであることを公表して活動する心理カウンセラーの村上裕先生。

「人間はプラスのコミュニケーションができない状態が長く続くと、なんでもいいから関わろうとします。ネガティブでもいいので、相手の反応を引き出そうとする。つまり、怒らせようと仕掛けてくるのです。

 子どもが好きな子にいじわるをする行為が代表的ですね。あとは返報性。会社で嫌なことがあって、親しい人に八つ当たりするのを心理学で返報性といいます。力でねじ伏せる、パワーコミュニケーションをしようとするんですね」

パワーコミュニケーションの前兆

 具体的にはこんな前兆があるそう。

「まず、言動の不一致があります。楽しい話をしているのに目が笑っていないとか、嫌な話をしているのに笑っているとか、会話の内容と表情、目つきが自然ではない状態というのは、ストレス反応なので、どこか違和感があります。

 また、人は心理状態によっていろいろなしぐさをします。わかりやすいところでいえば胸の前で腕を組む動作。もしも、話している相手がこれをしたら、自分を守ろうとする気持ちや被害者意識が強くなっている可能性があります。

 そのほかには、ボディタッチが極端に増えるか、極端に触らなくなる、など。日ごろから依存心が強い人はタッチが増えますし、プライドが高い人は触らなくなります。なので、こういった不一致、違和感を覚えたら、相手から距離を置いたほうがいいでしょう」

人は自分の気持ちを相手に「投影」している

 ただし、ここで気をつけなければいけないことが。

「それは『投影』です。これは言葉どおり自分の気持ちを相手に『投影』してしまうことです。例えば、あなたが不機嫌になると黙るタイプだとしましょう。そしてあなたはいま少し不機嫌です。そんなときに目の前の人が突然、黙ってしまうと、“あれ? この人いま不機嫌なの?”と思い込んでしまいがちです。

 本当はちょっと考え事をしていただけなのに、“黙ると不機嫌になるクセ”があるあなたは勝手に“この人はいま不機嫌”だと解釈してしまう。すると会話がギクシャクし、やがてお互いに本当に不機嫌になってしまいます。人は常に投影をしているので、それには気をつけてくださいね」

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相手の態度から「心」を読みとる方法

「“目は口ほどにものを言う”ではありませんが、人の心はしぐさに表れやすいものです。目だけでなく、手や足にも無意識のうちに、そのときの感情とリンクした特徴的なことをします。そんな特徴的しぐさを心理学的に抽出、身体の動きから相手の心を読む方法をお教えします」

【目】

「目が合ったときにうつむくのは、恥ずかしいときや我慢しているとき。上を向いているときは想像しているなど、記憶を巡らせているときと言われています。また、右下を見ているときには直近の過去のことを思い浮かべている、左下だと思い出しているよりは思案している状態とも。そこから転じて、ウソを考えている際は下を向く、といった説もあります」

【腕】

「話している相手が腕組みをしたら、自分を守ろうとする気持ちが働いている可能性があります。あなたと距離をとりたかったり、被害者意識が強くなっている状態かもしれません。また、会議中によく見かけるのがテーブルの上で常に手を組むしぐさ。

 これは緊張しているか、ガードをしている人です。口を手で押さえるのは自分が表している感情表現を他人に見られたくないか、感情表現するとリスキーだと考えている人が多いようです」

【足】

「貧乏ゆすりは足のしぐさの中で最も有名でしょう。イライラしたときにはたいていの人がこれをします。もうひとつ特徴的なのは「足組み」です。足を組むのはコミュニケーションや場をリードしたい人、あるいはリードする位置にある人がよく行います。

 男女間の場合では無意識に優位性を持ちたいという気持ちの表れです。ただし、足組みはただの習慣もあるので、そこはよく注意してください」

◎プロフィール

むらかみ・ゆたか 2007年に東京都内にカウンセリングルームP・M・Rを設立。さまざまな鑑定から、LGBT当事者のみならず、男女のカップルや男女の夫婦からも多くの心理相談を引き受ける。現在は、全国規模でのカウンセラー養成や心理学講座、ワークショップの開催を行っている。