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NPO法人『マザーリンク・ジャパン』代表・寝占理絵さん

 東日本大震災から5年。26兆円の予算を計上した集中復興期間は3月末で終了する。ボランティアの数もめっきり減った。変わりゆく被災地で、復興から取り残された人々がいる。

「被災地のシングルマザー家庭の困窮は深刻です。震災後の3年間、ずっと1日1食だったという家庭もあります」

 こう語るのはNPO法人『マザーリンク・ジャパン』代表の寝占理絵さんだ。

 震災直後から被災地入りしてシングルマザー家庭への支援活動を開始。現在は陸前高田、大船渡(ともに岩手県)、気仙沼(宮城県)を拠点に、仮設住宅などで暮らすひとり親家庭200世帯へ食糧支援などのサポートを行っている。

 厚生労働省が平成26年に発表した『ひとり親家庭の支援について』によると、全国の母子世帯数は123万8000。

 そのうち81%が就業しているが、パート・アルバイトといった非正規雇用が47%を占め、平均年間就業収入は181万円。働いているのに貧困というワーキング・プアが大半だ。

「被災地の状況は、さらに悲惨。多くのシングルマザーが非正規で働いていて、最低賃金が全国最低レベルに近いからです」(寝占さん)

 陸前高田や大船渡、気仙沼の最低賃金はそれぞれ時給695円、726円。寝占さんが支援する約200世帯の9割以上が手取り10万円以下の月収だという。被災地のシングルマザーたちは困窮と疲労、そして将来の不安の真っただ中にある。

取材・文/千羽ひとみ