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熊本地震の翌日15日に撮影された川内原発(鹿児島)

 なぜ、熊本地震のニュースで、周辺の原発への影響についてもっと詳しく報じないのか。東日本大震災から私たちが学んだのは、原発が重大被害を受けたら取り返しがつかなくなるということ。

 どこでも起こりうる地震や、津波、火山噴火と全国の原発の関係は?

「被災者や読者のみなさんが心配しているのは稼働中の鹿児島・川内原発でしょう。ところがNHKニュースなどで見せる地図は震源の熊本県だけ。鹿児島は映さない。

 意図的にやっているんじゃないかと疑いたくなるほどで、川内原発との位置関係がつかめませんよね。話も熊本にばかり集中し、日奈久断層や布田川断層など小さな断層に目をとらわれすぎです」(立命館大学・歴史都市防災研究所の高橋学教授)

 熊本県を中心に14日から続く地震で、死者48人、行方不明2人、避難中の体調悪化などによる関連死は12人にのぼった。熊本、大分などで1200人以上がケガを負った。建物の損壊は1万棟を超え、避難者は8万人以上(いずれも4月23日現在)。

 これほどの被害を出しているのに、全国で唯一、稼働中の九州電力川内原発は停止していない。

 原子力規制委員会は緊急時情報ホームページで「現在、各施設ともに異常情報は入っていません」とし、川内原発、玄海原発(佐賀)、伊方原発(愛媛)、島根原発のプラント状態などに異常がないことなどを報告している。むしろ、異常があったら大問題。踏み込みが甘い。

 原発のネガティブな情報発信はどうして目立たないのだろうか。地震や火山学の専門家によると、熊本地震が暗示するのは九州各地の地震だけではない。冒頭の高橋教授は2~3年以内に南海トラフ地震が発生する可能性が高まったとみる。

「国内最大の活断層である中央構造線は、台湾から沖縄、熊本、大分、愛媛を通って長野まで延びています。その先の首都圏は関東ローム層と呼ばれる火山灰が堆積しているため地下の断層が見えにくい。しかし、日本列島には大小無数の活断層が網の目のように走っています」(高橋教授)

 最も警戒すべきは中央構造線にかかわる地震という。地震が起きたら原発は大丈夫か。

 武蔵野学院大学の島村英紀特任教授(地球物理学)は、「震源が熊本、阿蘇、大分と移動していることを考えると、今後は愛媛沖や北東に移っていく可能性がある」として次のように話す。

「中央構造線から南に約30キロメートルの伊方原発は危ないといえます。それと鹿児島県に近い熊本県八代市で地震が起きていて、南西側に進むと川内原発の目の前です。この2つの原発は非常に怖いところに立っています。原発をつくる時点では、中央構造線でこれほど地震が起きるとは想定していなかったのではないか」