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 1日約4万人にのぼる食のプロたちが厳しい目を光らせ、食材の売り買いを行う築地市場。ここは古きよき時代の伝統を引き継ぎながら、約80年間、日本の食文化の一大拠点であり続けた。しかし、今年11月の豊洲移転に伴い、間もなく閉鎖されることになる。

 枝元なほみさんは劇団『転形劇場』の役者兼料理番を務める傍ら、東京・中野の無国籍レストラン『カルマ』のシェフを経て、料理家になった枝元なほみさんの買い物に同行させてもらった。

「特に行きつけがあるわけではないので、場内でいろいろ見比べて、お店の人と話しながら買い物をするのが楽しくて!」

 毎年、春はサワラを1本買いするために築地に来るのだそう。

「劇団員をしていたころ、役者仲間の男性陣の多くは築地で働いていました。波除神社までターレで迎えに来てもらって場内をぐるり1周……すごく誇らしい気持ちになりました」

 お買い物をスタートすると、枝元さんの目がキラリ。竹で編んだ市場かごがサマになっている。

「関東にはサワラのお刺身を食べられるところがないので、築地に来るんですよ。あとは、シンコ(コハダの子ども)や、からすみを作るためのボラの卵があると、つい買っちゃいます」

 しばらくウロウロしたのちに、『丸七商店』でいい形のサワラを発見した。

「サワラもそろそろ終わりですが、太っていておいしそうでしょう? 僕だったらバーナーで皮目をあぶって焼き霜にします。それから、寿司屋に聞くと、煮つけもうまいんだとか!」

 そう教えてくれたのは、『丸七商店』の御堂昌昭さん。その言葉につられて枝元さんはサワラをお買い上げ。

 さらに場内を歩き、キンキを買ったり、茂助だんごで買い食いしたりと、満喫した様子の枝元さん。続いて場外へ。

「お茶を買ったり、親子丼を食べたり、場外も楽しいところがいっぱい! 地方の市場にもよく行きますよ。三重県の尾鷲は漁港も市場も小規模ですが、『おわせお魚いちば おとと』という市場で野菜を売っていたり、ごはんが食べられたりで超興奮する。

 ファーマーズマーケットなどもすごく好き。当時80歳ぐらいだった母を連れていったら、普段は安いものしか買わないのに、当時は出始めで1000円もする安納芋を買ってニコニコ。市場って人をハイテンションにさせる活気や魅力がありますよね」