■コンクリートのがん

 日本ではどうなのだろう。

「中国自動車道は、そこそこ雪が降るので塩害でやられているところも少なくない。山陽新幹線の高架下なども傷んでいます。これは塩害もあるんですが、もうひとつ、コンクリートを傷める原因がある。『アルカリシリカ反応』によるもので“コンクリートのがん”と言われています」(溝渕教授)

 特定の石が、アルカリ金属であるナトリウムやカリウムに反応すると、石の周囲にゲル(ゼリー状のもの)を作る。ゲルが水を含むと膨張し、コンクリートにひび割れを生じさせる。それがアルカリシリカ反応だ。

「特定の石とは、火山岩系のものが多い。有名なものでは、輝石安山岩があり、これは瀬戸内海の小豆島の西にある島で豊富にとれたために、阪神地区や中国地区にコンクリート用材料として供給されたのです。

 '80年代に相次いでアルカリシリカ反応によるひび割れが見つかり、コンクリートに使用された材料の多くが安山岩系だったことがわかりました。その後、採掘場は閉鎖されて1986年の建設省の通達以降、大幅に減少しましたが、まだまだ予断を許さない状況です」(溝渕教授)

■インフラを作るまでは熱中し、あとは放ったらかし

 今後、どのような対策が施されていくのだろうか。

「首都高に関しては、まず湾岸沿いから順次補修を手がけていっています。3年前に、諮問委員会で首都高の更新、改修の提案がなされました。費用は数千億円、10年かけて大改修をするとなれば1兆円規模になります」

 コンクリートの老朽化の問題は、人々の意識の問題だと溝渕教授は言う。

「かつて“コンクリートの構造物にはメンテナンスは必要ない”という考え方が常識だった時代があり、さらに“インフラを作るまでは熱中し、あとは放ったらかし”という気分があった。必要なのはライフサイクルの考え方でしょう。

 人生設計と同じように、その構造物の一生を考えて、まずどのくらいもたせるのか、どういうふうに手をかけるのか考えていく必要がある。入院してから健康を取り戻すより、健康なうちに鍛えておくほうがトータルでは安く長生きできますから」