20160607_yutori_1

 国が進めてきた政策が生んだゆとり世代。彼らとの接し方を示すビジネス本も出版され「これだからゆとりは……」となにかにつけて揶揄される。その時代の教育を受けた世代というだけで、ひと括りにされ否定されるのはなぜなのだろうか?

 現在、放送中の連続ドラマ『ゆとりですがなにか』(日本テレビ系)。その中で1993年生まれの“ゆとり世代”=23歳が問題を起こす場面がある。 入社2年目の社員が、「用もないのに得意先回りなんて泥仕事っしょ。つーか自分、泥仕事したくないんで」とエラそうなことを言ってのける。退職願も、LINEで“会社やめまーす”。

 ドラマの演出上そうとう盛られているが、自分勝手で身のほど知らずで、問題を起こすやつらと、ひと括りにされてしまう“ゆとり世代”。

 若手の育成に詳しいリクルートマネジメントソリューションズの桑原正義氏は、「企業側にも問題があるんです。“ゆとり”というのは単なるスケープゴートです」と理解を示したうえで、

「少子化ですからきょうだい間で競い合うことも少ない。何でも与えられるから、自分から何かを手に入れようとしない。学校などで叱られない。間違えないようにネットで調べる。

 一方で、競争する力や我慢する力、能動的に動くことは社会に出てからの仕事には必要です。それができないのは困難克服経験の不足があると考えています。“ゆとり教育”が悪かったわけではありません」

 “ゆとり世代”を部下に持つ50代の自営業男性は、こう話す。

「マイペースかな。報告しなくちゃいけないことも報告しないし。注意したら謝るけど、直らないよね」

 またこんな声も。

「空気は違いますね。次の日を考えて無理しないっていうか。飲み会とかも付き合い悪いです。自己中心的というか」(30代の男性公務員)

 そのあたりの“ゆとりの生態”について桑原氏は、こう読み解く。

「小さいときからインターネットでいろいろな情報を得るようになった世代ですから、自分の価値観などをしっかりと持っています。だから自分にとって意味のある場になりそうにない、無駄に見えるものには、お金や時間を使いたくないんです」

 ビジネスマンを対象にした情報サイトを運営する(株)U-NOTEの小出悠人代表は“ゆとり世代”として教育を受け、大学に進学し2012年に起業したという。「これだから“ゆとり”は」と、十把一絡げでとらえられてしまうこともあったというが、気持ちの持ちようを明かす。

「逆に、自分が至らないことがあったんだなと反省しましたね。矛先を自分に向けて努力をして、結果を出すことで評価してもらえるように頑張りました」

 「自己中心的」「付き合いが悪い」との批判に対しては、

「僕たちには画一的なものがあまりないんです。みんなが好きなヒーロー、好きなマンガ、といったものがない。だから、個人の価値観をより大事にするのかなと思いますね。ほかの世代と比べるとギャップがあるのかな」

 団塊の世代、バブル世代、ロスジェネ世代などと個々人を集団として大ざっぱにくくってしまう世代という言葉。

 “ゆとり教育”の落とし子として“ゆとり世代”が誕生したが、今さら学びが足りなかったといわれても過ぎ去った時間は巻き戻せない。大人たちが決めた学習指導要領。子どもたちはその犠牲者なのか。

 小出代表は、自分もそうなんですが、と前置きをし、

「何ごとも環境のせいにしないで、自分で切り開いていく世代になってほしいですね。僕たちが40代50代になったとき、現在の評価を覆して、あの世代はすごかったっていわれるように頑張っていってほしいですね」