■誰にも言えずに苦しんでいる人たちがいる  

 '08年、キャサリンさんは沖縄で初めて、レイプ被害についてスピーチした。

「会場で“私も被害者なんです”と打ち明ける人が必ずいる。誰にも言えずに苦しんでいる人がどんなに多いか……。沖縄でも、50年間、誰にも言えずに苦しんできた70代のおばあちゃんに出会いました。

 これまでのすべての被害者と未来の子どもたちのためにも、レイプ被害を根絶することが私の目的です」

 キャサリンさんは加害者の逃亡後、自力で居場所を突き止め、米国で日本での裁判の判決承認を求める裁判を起こし、'13年10月、勝訴した。目下の展望は、来年1月までに、全国に『24時間被害者支援センター』を作ることだ。

 今回の事件を受け政府は、関係省庁の局長級で構成する「沖縄県における犯罪抑止対策推進チーム」を設置したが、検討されている対応策は街路灯や防犯カメラの増設など。

「“暗い夜道で被害にあう”など“レイプ神話”は捨てなければだめ。年齢、服装、場所、性別までも関係なく被害にあうの。ちょっとした治安向上ではなく、とにかく被害者を全面的に守る制度を整えなくては」(キャサリンさん)

■日米地位協定の改定を要求しない日本政府

 翁長雄志沖縄県知事は5月23日、安倍総理と会談し、オバマ米大統領と直接会話する場を設けてほしい、日米地位協定を見直してほしい、と要望した。

 日本側の犯罪捜査や裁判権を制限するこの協定に対し、県民はこれまでも再三にわたり改定を求めている。しかし伊勢志摩サミットに参加するため来日したオバマ大統領に、安倍首相が改定を要求することはなかった。

 翁長知事は、安倍総理の対応を「大変残念であります」と批判。「このまま日米地位協定の改定がなされなければ、県民は、米軍基地に対する不安を解消することができず、これ以上耐えることはできません」とコメントを発表した。

 沖縄で暮らす名桜大4年の玉城愛さん(21)は、同年代のレイプ被害者に涙する。

「想像するよりもずっとつらくて怖かったと思います。現場付近は私も通り慣れた道。もし被害者が自分や家族、友人だったらと思うと……。みなさんも考えてみてほしいです」

 日本政府には、

「国民の命よりも日米関係が大切なんだなと肌で感じました。“ これ以上ふざけないで”と思う」

 沖縄の声を聞くたびにキャサリンさんが思うことは、“Okinawa is crying.”。

「私が沖縄で会う人は、みんな涙を流すの。沖縄では米兵によるレイプの危険性が高いだけじゃない。日米地位協定のせいで犯人の国外逃亡も防ぎづらくなっています。もう私と同じ地獄を誰も味わわないでほしい。悪の循環を壊さなければ。人間が作った問題ですから、人間が直せるはず」