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 国が発達障害者支援法を改正して支援に乗り出すなど、社会問題となっているADHD

 臨床心理士で、ADHDを持つ人々の支援のためにさまざまな活動を行うNPO法人・えじそんくらぶを立ち上げた高山恵子さんが提案するのは“ADHDのDがない、ADH”。

 最後のDは障害を意味する英語の頭文字。なので、つまり「不注意や多動性、衝動性があっても、障害にならない生活を目指そう」というわけだ。

 そのために大切なのは、苦手なことを人に頼めること。まずは家族、パートナー、上司、友人に理解してもらい、サポートを得よう。「忘れちゃうから教えてね」「なくすと困るから持っていて」とお願いし、助けてもらったら「ありがとう」と感謝を。

 女性の場合、きちんとした家事をと思いがちだが、「自分の苦手な部分を使わない仕事に就いてしっかり稼ぎ、ハウスキーパーに頼みましょう」と高山さん。

「できない自分や子どもを責めず、どうやったらできるかを考え、QOL(生活の質)を高めて。もしパニックになりそうなら、深呼吸してリラックスを」

 発達障害の臨床経験が豊富な「どんぐり発達クリニック」の宮尾先生、えじそんくらぶ代表の高山さんから、ADHDの女性が快適に生活するためのアイデアと、ADHDの子どもへのサポート方法を教えてもらいました。

【会話】

 人が話している間は、どれほど言いたいことがあっても1分間黙って聞く。話すときは声が大きくなりすぎないよう気をつけて。会議中はメモを取って、よく考えてから発言を。

【片づけ】

 「水曜日」「5のつく日」と片づける日を決める。1度に1か所、本棚やベッドまわりなどエリアをしぼって集中的に片づける。自分なりに整理すればOK。

【「なくす・忘れる」対策】

 大事な物の置き場所を決めて、家族や友人にときどきチェックしてもらう。週3日ほど事務処理の日を決め、ATMを使って支払いモレを防止。携帯電話やパソコンの「リマインダ」機能を活用して、その日の大事な予定を事前に表示する。

【時間の管理】

 好きなことに集中しすぎて時間を忘れないよう、時計のタイマーを活用。時刻の決まった予定には、アラームを15分前に設定して行動を開始する。

【メモ】

 配布されたプリントや掲示物は携帯電話のカメラで撮影。用紙に書き留めてもなくしやすいので、聞いたことは音声入力で携帯に記録しておく。

【サポーター】

 家族共用の大きめのカレンダーに予定を書き込み、大事な用事にシールをぺたり。みんなに自分の予定を把握してフォローしてもらう。提出する書類を書いたら家族に確認してもらう。職場や学校にも自分を理解してサポートしてくれる人を見つける。

【“叱る”をやめてアドバイス】

 できないことを責めると、ますます自信とやる気を失うばかり。まずは子どもの話を聞いて共感の言葉をかけ、優しく「〇〇〇なところはこうして直したほうがいいよ」と教える。

【褒めて、ごほうびを】

 子どもは褒められ、認められて「できるんだ」という気持ちを育む。よい行動をしたときはたくさん褒め、小さい子どもにはシールやカードなどのちょっとしたごほうびを。

【意味づけした記憶で】

 意味のある記憶なら、ワーキングメモリを使わずに活用できる。例えば、衣類は下から上の引き出しへ順に靴下、ズボン、上着、帽子と収納する。“下から上”と意味がわかれば、自分で出し入れできる。